点呼記録簿・運転日報・運転者台帳は、紙をやめてデータだけで持ってよいのか

目次
点呼の記録簿、運転日報、運転者台帳を、システムやAIによる取り込みに移したい。そう考えたとき、最初に止まりやすいのが「データだけで持ってよいのか、紙も残すのか」という問いです。この問いは、書類ごとに答えの置き場所が違います。条文ではなく国土交通省の通達に書かれている書類があり、別の法律とその省令の表に掲げられている書類があります。書類をひとまとめにして「電子保存でよい」とも「だめ」とも言えないのは、そのためです。
この記事は、一般貨物自動車運送事業者等の経営者と運行管理者に向けて、書類ごとに根拠の所在を並べ、原文に書かれていることと書かれていないことを分けたものです。読んだ原文は、貨物自動車運送事業輸送安全規則(e-Gov法令検索)、国土交通省の通達「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」の最終改正 令和8年6月26日の版、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律とその国土交通省令です(2026年10月15日に確認)。通達は改正が続くため、読む時点の最新の版を国土交通省の公開資料で確かめてください。点検整備記録簿、貨物軽自動車運送事業の台帳(第9条の6)、旅客自動車運送事業、税務書類は扱いません。個別の運用が規定に合うかの判断は、この記事ではしません。
先に用語を分ける:「電磁的記録」と「スキャナで読み取った保存」は別の言葉
電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録で、電子計算機による情報処理の用に供されるものを指します。書面は、文字や図形などが記載された紙その他の有体物を指します。どちらも、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(以下「e-文書法」)の第2条第3号・第4号が定める意味です。
以降に出てくる言葉は、次のように使い分けます。
- 「電磁的方法」は、通達が点呼の記録などについて使う言葉です。通達の該当箇所は、どのような保存なら電磁的方法による保存にあたるのか、その中身を説明していません。
- 「スキャナで読み取った保存」は、国土交通省令の第4条第1項第2号が、電磁的記録の保存の方法の一つとして挙げているものです。書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録を、ファイル等で保存する方法を指します。
- 税務書類の電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の保存方法を定める別の制度です(同法第1条)。運行管理の記録の根拠にはそのまま使えないため、この記事では扱いません。
Q1. 書類ごとに、データで持つことの根拠は、どこに書かれているのか
輸送安全規則の七つの記録・書類について、条文の定めと、電磁的な記録・保存に触れている場所を並べます。条文そのものには、書面か電磁的記録かの別が書かれていません。第7条、第8条、第9条、第9条の2、第9条の3、第9条の5、第10条の条文には、「書面」「電磁的」の語が出てきません。電磁的な記録・保存の扱いは、通達と、別の法律の省令に書かれています。
| 書類 | 輸送安全規則の定め | 電磁的な記録・保存に触れている場所 | 書かれている内容(要旨) |
|---|---|---|---|
| 点呼の記録 | 第7条第5項。点呼を行った旨、報告・確認・指示の内容などを運転者等ごとに記録し、1年間保存 | 通達 第7条 3.(第5項関係) | 点呼を行った旨並びに報告及び指示の内容の記録・保存について、書面又は電磁的方法のいずれでも差し支えない。平成10年自環第72号の取扱いによらない |
| 業務の記録 | 第8条第1項。運転者等ごとに記録させ、1年間保存 | 通達 第8条 1.の(4) | 業務記録の記録・保存について、書面又は電磁的方法のいずれでも差し支えない。平成10年自環第72号の取扱いによらない旨も書かれている |
| 運行記録計による記録 | 第9条第1項。一般貨物自動車運送事業者等が、車両総重量7トン以上又は最大積載量4トン以上の普通自動車、その被けん引自動車をけん引するけん引自動車、特別積合せ貨物運送に係る運行系統に配置する事業用自動車について、瞬間速度・運行距離・運行時間を運行記録計で記録し、1年間保存(対象の範囲は条文で確認) | 通達 第9条 | 運行記録計による記録・保存について、書面又は電磁的方法のいずれでも差し支えない。平成10年自環第72号の取扱いによらない旨も書かれている |
| 事故の記録 | 第9条の2。事故を起こした事業用自動車の運行を管理する営業所で3年間保存 | 通達 第9条の2 1. | 書面又は電磁的方法による記録・保存のいずれかでも差し支えない。作成は事故発生後30日以内 |
| 指導及び監督の記録 | 第10条第1項。日時、場所、内容、行った者、受けた者を記録し、営業所で3年間保存 | 通達 第10条 3. | 書面又は電磁的方法による記録・保存のいずれかでも差し支えない |
| 運行指示書 | 第9条の3。第7条第3項に規定する業務を含む運行ごとに作成し、運行の終了の日から1年間保存 | 通達 第9条の3 5.と、国土交通省令の第3条第1項・第5条第1項、別表第一・別表第二 | 書面の作成・保存に代えて、電磁的記録の作成・保存を行うことができる |
| 運転者等台帳 | 第9条の5。運転者等ごとに作成して営業所に備え置き、運転者でなくなった場合は記載して3年間保存 | 通達 第9条の5 5.と、国土交通省令の第3条第1項・第5条第1項、別表第一・別表第二 | 書面の作成・保存に代えて、運転者等台帳に係る電磁的記録の作成・保存を行うことができる |
条文に「運転日報」という名前の書類は出てきません。自社が運転日報と呼んでいる書類が、上の表のどの書類にあたるのか(業務の記録を兼ねているか、点呼の結果の欄を持っているか、運行指示の内容を書く欄を持っているか、など)は、記録事項を条文と突き合わせて確かめることになります。名前ではなく、記録している事項で判断する、という順序です。
Q2. 通達が「書面又は電磁的方法」と書く五つの書類は、データだけにしてよいと言えるのか
表の上から五つ(点呼の記録、業務の記録、運行記録計による記録、事故の記録、指導及び監督の記録)は、通達が、記録・保存の方法として書面と電磁的方法のどちらでも差し支えないと書いている書類です。紙も併せて残すよう求める文言は、通達全37ページの本文を検索し、該当する条の解釈を通読した範囲では見当たりませんでした。事業者団体の案内にも、同じ趣旨の一文があります。神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関の点呼記録簿のページに、書面による記録・保存に代えて電磁的方法による記録・保存も可能と書かれています。法令でも通達でもない団体の案内なので、運用の例として引くにとどめます。
点呼の記録については、通達が「差し支えない」と書く対象の語に注意が要ります。通達の文言は「点呼を行った旨並びに報告及び指示の内容の記録・保存」で、条文第5項が挙げる氏名、車両の識別表示、日時、方法などの各事項の保存にまで同じ文が及ぶかは、この記事では通達の文言を超えて読み広げません。他の四つの書類も、通達の文が対象とする語は、「業務記録」「運行記録計による記録」「事故の記録」「指導及び監督の内容の記録」で、表はこの語に合わせています。
ただし、通達の書き方は「電磁的方法でもよい」というもので、紙を処分してよい時期や条件までは書かれていません。書かれていない部分が残ります。通達は、行政が事業者を指導するときの解釈・運用を示すもので、「差し支えない」という書き方も、その範囲の記述です。次の三点は、読んだ範囲では記載を確認できませんでした。
- 電磁的方法の中身です。どのような保存なら電磁的方法による保存にあたるのか、改ざんを防ぐ措置や、読めなくならない措置、控えの持ち方を示した記載は、通達の該当箇所にありません。点呼の記録、業務の記録、運行記録計による記録の箇所は、以前の取扱いの通知(平成10年自環第72号)によらないと書いています。その通知の中身は、この記事では確認していません。
- データの置き場所です。事故の記録と指導及び監督の記録は、条文が営業所で保存すると書いています。データを外部のサービスに置くとき、これをどう満たすのかは、通達の該当箇所に書かれていません。
- 紙で書いたものを画像にして保存したあとの、元の紙の扱いです。「スキャ」「原本」「画像」の語は、通達に出てきません。
遠隔点呼については、通達の第7条に、点呼告示の機能により電磁的方法で記録され、実施地点間で共有された事項を、翌営業日以内を原則に確認するよう指導する記載があります。遠隔点呼や自動点呼の記録の扱いは、この記事の範囲外です。
そのため、「データだけで持つことを妨げる記載は見当たらない」と「データだけにしてよいと確認が取れた」は、同じ意味ではありません。後者は、自社の方法について運輸支局に確認して初めて言える部分です。
Q3. 運行指示書と運転者等台帳は、なぜ根拠の置き場所が違うのか
この二つの書類だけが、輸送安全規則の外にある、別の法律に基づく国土交通省令の別表に掲げられているためです。通達も、その省令に基づくものとして電磁的記録に触れています。e-文書法の第3条は、保存について、他の法令の規定により書面で行わなければならないとされているもの(主務省令で定めるものに限る。)を、主務省令で定めるところにより、書面の保存に代えて電磁的記録の保存で行えるとし、その保存は書面で行ったものとみなすとしています。第4条は、作成について同じ仕組みを置きます。何がその対象になるかは、法律ではなく、国土交通省令の別表に並べられています。
その国土交通省令(平成17年国土交通省令第26号)の別表第一(保存)には、輸送安全規則の第9条の3第4項と、第9条の5第1項・第2項が掲げられています。別表第二(作成)には、第9条の3第1項と、第9条の5第1項・第2項が掲げられています。点呼の記録(第7条)、業務の記録(第8条)、運行記録計による記録(第9条)、事故の記録(第9条の2)、指導及び監督の記録(第10条)の条は、輸送安全規則の行には掲げられていませんでした。通達は、運行指示書と運転者等台帳について、この省令の第3条第1項と第5条第1項により電磁的記録の作成・保存ができると書いています。
この省令には、電磁的記録の作り方と保存の方法も書かれています。
- 保存の方法(第4条第1項)は、作成された電磁的記録を電子計算機のファイル等で保存する方法、または、書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録をファイル等で保存する方法の、いずれかです。
- 保存した場合は、必要に応じて、電磁的記録に記録された事項を、直ちに明瞭な状態で電子計算機の映像面に表示し、その事項を記載した書面を作成できる措置を講じます(第4条第2項)。
- 同一内容の書面を二以上の事務所等に保存しなければならない場合に、一つの事務所等に電磁的記録を保存し、他の事務所等で表示・書面作成ができる措置を講じたときは、他の事務所等にも保存が行われたものとみなされます(第4条第3項)。
- 作成の方法(第6条)は、電子計算機のファイルに記録する方法、または電磁的記録媒体をもって調製する方法です。作成の際に署名等をしなければならないとされているものについては、電子署名などの措置が第7条にあります。運行指示書や台帳の条文にその場面があるかは、この記事では確認していません。
なお、運行指示書は、すべての運行に必要な書類ではありません。条文は、第7条第3項に規定する業務(点呼を対面等で行えない業務)を含む運行ごとに作成すると書いています。自社にこの運行があるかどうかで、そもそも対象になるかが変わります。
Q4. 紙で書いたものをスキャンしたら、紙は捨ててよいのか
この問いは、原文が最も書いていない部分です。原文の記載と、書かれていない部分を、論点ごとに分けます。
| 論点 | 原文の記載(読んだ範囲) | 決める人・確認先 |
|---|---|---|
| 紙で作った点呼簿・日報・指導の記録を画像にして保存したあとの、元の紙 | 通達の五つの書類は、記録・保存の方法として書面又は電磁的方法のどちらでもよいと書く。画像にしたあとの紙の扱いは、記載を確認できない | 自社の規程で決め、運輸支局に確認する。確認した日・相手・内容を残す |
| 運行指示書・運転者等台帳をスキャナで読み取って保存する場合の、元の紙 | 国土交通省令の第4条第1項第2号が方法の一つとして挙げ、第2項が表示・書面作成の措置を求める。e-文書法の第3条は「書面の保存に代えて」と書き、その保存は書面で行ったものとみなす。元の紙を処分する時期を述べた文言は、読んだ範囲に見当たらない | 方法と措置を自社が満たしているかの判断になる。運輸支局に確認する |
| 文字認識(AI-OCRなど)で作った文字データ | 省令の第4条第1項第2号は「スキャナ…により読み取ってできた電磁的記録」と書く。読み取った画像とは別に文字データを作った場合に、どちらが保存すべき電磁的記録かは書かれていない | 画像と文字データのどちらを正とするかを自社で決め、運輸支局に確認する |
| 運行指示書の携行、運転者等台帳の写真 | 第9条の3第1項は、運行指示書を運転者等に携行させると書く。第9条の5第1項は、写真を貼り付けた台帳と書く。通達の第5項は、作成・保存を電磁的記録でできると述べるにとどまり、携行や写真の貼り付けをデータで行う方法は書いていない | 運輸支局に確認する |
| データの置き場所と「営業所において保存」 | 事故の記録と指導及び監督の記録は営業所で3年間保存と書く。データを外部に置いた場合の扱いは、通達の該当箇所に書かれていない | 運輸支局に確認する。外部に預ける契約の確認項目は、「運行・点呼のデータを外部サービスに預ける前に」の記事で整理している |
紙を処分する前の判断条件として、次の四つを置く進め方を提案します。
- その書類が、Q1の表のどの書類にあたるか。
- 根拠が、通達の一文だけの書類か、省令の方法(スキャナ読取、表示・書面作成の措置)まで書かれている書類か。
- 運輸支局に確認した内容を、日付と相手とともに残したか。
- 確認が取れるまでの間、紙とデータの両方を持つ期間を置くか。置くなら、いつまでか。
「スキャンしたら紙は捨ててよい」とも「捨ててはいけない」とも、この記事では言いません。読んだ原文から言えるのは、書類ごとに、根拠の強さと、書かれていないことの範囲が違う、というところまでです。
Q5. データにしても、変わらずに残る定めは何か
条文は、記録事項と保存期間を、媒体に関係なく定めています。紙からデータに移しても、その定めは条文のとおりです。たとえば点呼の記録の条文(第7条第5項)は、点呼を行った旨と報告・確認・指示の内容に加えて、点呼を行った者と受けた運転者等の氏名、車両の識別表示、日時、方法、その他必要な事項を挙げ、保存を1年間としています。
通達は、業務前点呼、中間点呼、業務後点呼のそれぞれについて、記録しておく事項を挙げています。営業所間でIT点呼を実施した場合は、点呼簿に記録する内容を、点呼を実施した営業所と受けた営業所の双方で記録し、保存するようにも書いています。
画像やAIによる取り込みに移すときは、取り込んだあとのデータが、これらの記録事項を欠かさず持っているか、そして保存期間の間、必要なときに取り出せるかが、媒体の問いとは別に残ります。
Q6. 解説ページにある「紙でも電子でもよい」と、同じことなのか
運転日報の解説ページには、保存方法の定めはなく紙でも電子データでもよい、と書くものがあります。確認した運転日報の解説ページ7件のうち4件が、そのように書いていました。それらは運転日報(業務の記録)についての言い方です。この記事は、同じ問いを書類ごとに分けて、根拠が通達の一文なのか、省令の方法まで書かれているのかを示します。
別の制度を混ぜないための線引きも、書いておきます。
- 税務書類の電子帳簿保存法は、別の制度です。運行管理の記録に当てはめるかどうかを、この記事は判断しません。
- 点検整備記録簿の電磁的保存は、別の国土交通省資料に書かれています。日常点検で「要整備」が出た車は、いつ運行に戻ったのかの記事で触れています。
- 旅客自動車運送事業の資料は、貨物の根拠としては使いません。貨物軽自動車運送事業の台帳(第9条の6)も対象外です。
当社の運送向けの支援について
当社の運送の監査対応の公開ページが案内しているのは、点呼、日報、日常点検、勤怠、教育、整備などの必要記録について、未入力を毎日検知すること、誰がいつまでに何を直すかをタスクにすること、提出物を整理・命名・検索できる状態に整えることです。書面と電磁的記録のどちらで持つか、紙の原本を処分してよいかといった法令上の判断は、同ページの本文には案内として書かれていません。法令判断や行政対応の最終判断はお客様ご自身に行っていただき、必要に応じて専門家と連携する前提です。
この記事の表は、自社の記録を整理する材料です。取り込んだデータが、省令の求める方法にあたるかどうかを保証するものではありません。提供内容の詳細は運送の監査対応をAIで仕組み化|点呼・日報・運行管理に掲載しています。記録のやり方を現場で切り替える進め方はドライバーに記録のやり方を変えてもらう前にに、データを外部のサービスに預けるときの確認項目は運行・点呼のデータを外部サービスに預ける前にに、指導及び監督の記録を扱う年間計画の点検は運転者への指導・監督が年間計画どおりに進んでいるかは、誰がいつ確かめるのかにまとめています。
確認に使った原文
- 貨物自動車運送事業輸送安全規則(e-Gov法令検索。第7条、第8条、第9条、第9条の2、第9条の3、第9条の5、第10条を確認)
- 国土交通省「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」(最終改正 令和8年6月26日の版。第7条 3.、第8条 1.の(4)、第9条、第9条の2 1.、第9条の3 5.、第9条の5 5.、第10条 3.を確認)
- 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号。第2条から第4条を確認)
- 国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則(平成17年国土交通省令第26号。第3条から第7条、別表第一・別表第二を確認)
事業者団体の案内や解説ページは、法令ではなく運用や言い方の例として引いています。通達や省令は改正されることがあります。読む時点の版と、自社の方法がどの規定にどう当たるかの個別の判断は、運輸支局や専門家に確認してください。
自社の記録を、どの根拠で持つのかを整理したい方へ
書類ごとに、根拠の置き場所と、書かれていない部分を見分けておくと、データに移すときの確認事項が絞れます。
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