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運行・点呼のデータを外部サービスに預ける前に:個人情報の安全管理と、解約後の保存期間を契約で確かめる

AI(DX AX)

運行管理や点呼の記録をクラウド型のサービスで管理しようとすると、機能や料金を比べる前に、確かめておきたいことが出てきます。氏名や体調の確認内容を含む記録を、他社のサーバーに置いてよいのか。契約をやめたとき、法令で残すよう定められた記録は手元に残るのか。この記事は、運送会社の経営者や運行管理者が、運行・点呼の記録を外部サービスに預ける前に、契約や仕様書で確認しておきたい事項を、個人情報の安全管理と、記録の保存期間の2点に絞って整理したものです。製品の比較や、個別の取扱いが適法かどうかの判断はしません。

預け先を選ぶ段階の全体像は運送の監査対応、委託先の選び方で、自社の記録の現状を書き出す段階は運送会社の記録運用を見直す前に、まず自社の現状を棚卸しする5つの視点で扱っています。ここでは、データを預けるときの契約と、解約したあとの手元の記録に絞ります。

相談前に整理する3ステップの図:1.現状を書き出す(点呼記録・運行記録・監査資料)、2.判断の基準を決める(何を任せるか・誰が判断するか・どこまで確認するか)、3.任せる範囲をそろえる

預けるデータを、中身で分ける

サービス上は「点呼」「日報」といった機能名で並んでいますが、預けるデータは中身で分けて考えると、確認すべき相手と内容が見えます。

預けるもの中身の例確認したい点
点呼の記録点呼を行った旨、報告・確認・指示の内容、点呼をした人と受けた人の氏名、車両、日時、方法氏名と、体調・酒気帯びの確認内容が一緒に残る。誰が見られるか
業務の記録(運転日報)運転者の氏名、車両、業務の開始・終了の地点と日時、休憩の記録など運転者ごとの行動の履歴になる。閲覧と持ち出しの範囲
運行記録計の記録速度、運行距離、運行時間運転者との対応づけ。保存先とファイル形式
機器から取り込む値アルコール検知の結果、システムによっては体温や血圧など取り込む項目は機器とサービスで異なる。何のために使うか

中身の例は、輸送安全規則が記録事項として挙げているものと、サービスで一般に扱う項目です。実際に預ける項目は、自社で使う機能から書き出してください。

法令が決めていること(原文を確認した範囲)

以下は、e-Govと個人情報保護委員会のページに掲載されている本文に当たり、趣旨を要約したものです。法令やガイドラインは改正されることがあるため、契約を結ぶ前に最新の内容を確認してください。自社のやり方が条文に合っているかの判断は、専門家、運輸支局、個人情報保護委員会の窓口に相談してください。

記録の保存:義務を負うのは事業者

  • 貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第5項では、事業者は点呼で報告を求め、確認し、指示を与えたら、その旨と内容に加えて、点呼をした人と受けた人の氏名、車両、日時、方法などを運転者等ごとに記録し、一年間保存しなければなりません。
  • 同規則第8条では、運転者等の業務について、運転者等ごとに定められた事項を記録させ、これも一年間保存するものとされています。
  • 同規則第9条は、一定の事業用自動車について、運行記録計で瞬間速度、運行距離、運行時間を記録し、一年間保存することを定めています。対象となる事業者と車両の範囲は条文で確認してください。
  • 第7条・第8条の保存の義務を負うのは貨物自動車運送事業者で、第9条の義務を負う事業者は条文が定める範囲です。自社がどの条文の対象になるかは条文で確認してください。対象となる場合、記録を置く場所を外部サービスに任せるときでも、必要な期間、記録が手元で見られる状態にあるかは、事業者として確かめる事項になります。
  • 事故の記録や運転者台帳など、別の保存期間が定められている記録もあります。この記事は、点呼、業務の記録、運行記録計の記録に絞っています。

個人データの安全管理と、委託先の監督

  • 個人情報保護法第23条は、漏えい、滅失、毀損を防ぐなど、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを求めています。第25条は、個人データの取扱いを委託する場合に、委託を受けた者に対して必要かつ適切な監督を行うことを求めています。
  • 第22条は、利用する必要がなくなった個人データについて、遅滞なく消去するよう努めることを求めています。条文は「努める」という書き方で、何年といった期間は定めていません。
  • 第2条第3項は、病歴などを含み、取扱いに特に配慮を要する個人情報を「要配慮個人情報」と定義しています。点呼で確認する体調の報告や、機器の測定値がこれに当たるかどうかは、内容による個別の判断です。この記事では判断しません。
  • 個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)3-4-4は、委託先の監督として、委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を挙げています。委託先が再委託する場合の事前報告や承認にも触れています。

クラウドの利用が「委託」に当たるか

個人情報保護委員会のQ&A(Q7-53、Q7-54)は、クラウドサービスの利用が委託に当たるかどうかについて、保存しているデータに個人データが含まれるかではなく、提供事業者が個人データを取り扱うこととなっているかが基準になる、と説明しています。提供事業者が取り扱わないこととなっている場合の例として、契約条項でサーバーに保存された個人データを取り扱わない旨を定め、適切にアクセス制御を行っている場合などが挙げられています。そのときは第25条の監督義務は課されないものの、利用する事業者が自らの安全管理措置として適切な措置を講じる必要がある、とされています。

観点提供事業者がデータを取り扱う前提のサービス提供事業者が保存データを取り扱わないこととなっているサービス
判断の目安入力、集計、出力、サポート対応などで、提供事業者が中身を取り扱う契約条項で取り扱わない旨が定められ、アクセス制御が適切に行われている
第25条の監督必要課されない(Q&Aの説明)
自社の安全管理措置必要必要
契約書で見たいこと取扱いの範囲、再委託、報告、監査、事故時の連絡取り扱わない旨の条項、アクセス制御の内容、権限の管理

どちらに当たるかは、サービスの仕組みと契約条項で決まります。サポート対応や障害調査で提供事業者が中身を見られるかどうかも、サービスによって異なります。営業担当者の口頭の説明だけでなく、契約書と仕様書で確認し、判断に迷う場合は専門家に相談してください。

保存期間と、契約終了後の手元

保存期間の確認は、「サービスが何年データを持つか」の話と、「契約が終わったあとに自社の手元に何が残るか」の話に分かれます。

  1. サービス側の保持期間の設定が、自社が保存すべき期間より短くないか。一定期間が過ぎると自動で消える仕様の場合、消えたあとに自社で見られるか。
  2. 解約や契約満了のあと、サービス側のデータがいつまで残り、いつ消えるか。自社が取り出せるのはその間か。
  3. 取り出したデータを、自社の側で必要な期間、見られる形で保管できるか。

個人情報保護法第22条は、利用の必要がなくなった個人データの消去に努めることを求め、輸送安全規則は、記録の種類ごとに一定期間の保存を求めています。この二つをどう整理するかは、記録の種類や目的で変わりうるため、専門家に確認してください。運用の面では、保存が求められる期間の途中で消してしまわないことと、期間が過ぎた記録を放置しないことの両方を、あらかじめ決めておく必要があります。

契約の時期ごとに、決めておくことを並べると次のようになります。

時期自社が決めること提供事業者に確認すること
契約前預けるデータの範囲、手元に残すコピーの有無、保存すべき期間保持期間の設定、取り出しの形式と範囲、解約後の保持と削除
運用中閲覧できる人の見直し、取り出しの試行の頻度再委託先の変更の連絡、事故や障害の連絡の流れ
終了の前後保存が必要な分を取り出す期限、保管先、削除を依頼する時期削除の時期、バックアップからの消去、削除が終わったことの連絡
終了後取り出した分の保管場所と、保管を終える時期問い合わせの窓口が残るか

契約書・仕様書で確認する項目

確認項目契約書・仕様書の見どころ書面で受け取るもの
データを取り扱う者提供事業者の従業者が閲覧できるか、閲覧する場面は何か取扱いの範囲を示す条項
再委託と保存場所再委託先の有無、保存先の国・地域再委託先の一覧、変更時の連絡の方法
権限の設計運行管理者、補助者、運転者本人、営業所ごとの閲覧・修正の範囲権限の一覧、操作の履歴の有無
取扱状況の把握報告、監査、問い合わせへの対応報告の頻度と内容、監査の可否
事故が起きたとき漏えい等の連絡の時期と内容連絡の窓口と手順
取り出しの形式全期間のデータを出せるか、添付や修正の履歴も出るか出力形式の説明、試しに出した結果
保持期間の設定自動削除の有無、設定を変えられるか設定の説明書
解約後データを保持する期間、削除の時期、バックアップの扱い削除が終わったことを示す連絡
利用の目的サービスの改善や集計に使うか目的を限る条項、使わない設定の有無
サービスの終了提供事業者が事業を終えるときの取り出し事前の通知期間

ガイドラインは、委託先の取扱状況を把握するために、定期的な監査などで契約の内容の実施の程度を調べることが望ましいとしています。契約前に一度確認して終わりにせず、運用中にも見直しの機会を持てるかを確かめます。

預ける前の進め方

  1. 預けるデータを、上の表の4つの区分で書き出す。
  2. 各データについて、保存が求められる期間と、自社で見られる必要のある期間を決める。
  3. 提供事業者がデータを取り扱う前提かどうかを、契約書と仕様書で確認する。
  4. 確認項目の回答を、口頭ではなく書面で受け取る。
  5. 試用の段階で、データを取り出して自社のパソコンで開けるかを試す。
  6. 運用が始まったあとの確認の時期と、担当者を決める。
  7. 契約を終えるときの手順(取り出し、保管、削除の依頼、完了の確認)を、契約前に文書にしておく。

預ける範囲を絞ったほうがよい場合

  • 取り出しの形式や範囲を、書面で説明してもらえない
  • 提供事業者がデータを取り扱うのかどうかを、契約書で確かめられない
  • 解約後のデータの扱いが、規約に書かれていない
  • 再委託先や保存先を教えてもらえない

こうした場合は、預けるデータを必要な機能の分に限る、体調の確認内容など取扱いに配慮が要る項目は預けない、手元に控えを持つ、といった範囲の絞り方を検討します。どこまで絞るかは、専門家とも相談して決めてください。

うまくいかないパターン

  • 導入時に取扱いの条項を確認したきり、運用中に見直す機会がない
  • 契約をやめる段になって、取り出しの形式や期限を調べ始める
  • サービスが一定期間で自動削除する設定になっているのを知らず、必要な期間に満たないうちに記録が消える
  • 運転者の個人の記録が、誰でも見られる権限になっている
  • 営業担当者の説明だけで判断し、契約書や仕様書で裏づけを取っていない
  • 取り出したデータを、誰がどこに置いたのか決めていない

当社の運送向けの支援について

当社の運送向けサービスページには、点呼・日報・日常点検・勤怠などの記録の未入力や矛盾を毎日検知する運用の設計について記載しています。また、自動点呼等で健康情報等を取り扱う場合は、同意・規程・運用ルールの整備を前提に、目的を限定して管理する旨も記載しています。最終的な法令の判断や行政への対応はお客様ご自身で行い、必要な場面では専門家とも連携する、という前提です。

サービスの内容は運送の監査対応をAIで仕組み化|点呼・日報・運行管理を、運行管理者の仕事の全体像は運行管理者の役割と毎日やることをご覧ください。

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