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応募者から開示を求められたとき、「保有個人データ」とは何を指し、AIの要約・面接メモ・ATSの記録はその中に入るのか

AI

応募者から「選考のために会社が持っている自分のデータを見せてほしい」というメールが届いた場面を想定します。会社の手元には、応募書類から起こした項目、AIが作った要約、面接官の評価やメモ、採用管理システム(ATS)に残った記録、AIに渡した指示と出力のログがあります。このうち何が開示請求の対象になりうるのかは、「保有個人データ」という言葉の意味で決まります。

この記事は、個人情報保護法の条文、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)、同委員会のQ&Aで、その言葉を定義から読み、五つの記録に当てはめる問いの形に直したものです。開示するか、どこまで開示するかの結論は、この記事では出しません。個別の事案が条文に当たるかは、社内の法務や弁護士などの専門家に確認してください。対象は、個人情報データベース等を事業の用に供している個人情報取扱事業者(法第16条第2項)で、国の機関や地方公共団体などは含みません。

条文は、e-Govで令和8年10月16日に取得した現行の版(令和8年10月1日に施行された版)で確認しました。ガイドライン(通則編)とQ&Aは、個人情報保護委員会のページを同じ日に取得して読みました。

先に、読み取れたことを四つ挙げます。

  • 開示を請求できるのは、本人が識別される「保有個人データ」です(法第33条第1項)。保有個人データは、個人データのうち、会社が開示や訂正、利用停止などを行える権限を持つもの(政令で定める除外を除く)をいいます(法第16条第4項)。
  • 個人データは、検索できるように体系的に構成された集合物(個人情報データベース等)の一部になった個人情報です(法第16条第3項)。検索できる状態にない情報は、そもそも個人データに当たらないとQ&Aは述べます。
  • ガイドライン(通則編)は、個人に関する情報に、事実や判断と並べて評価を表す情報も含めています(2-1)。確認したガイドライン本文とQ&Aに、AIが作った要約か人が書いた所見かで扱いを分けた記載は見当たりませんでした。
  • 条文が「開示しないことができる」とするのは三つの場合で、「選考に関する情報」という区分は条文にありません(法第33条第2項)。この三つに当たるかは、記録ごとに個別に判断する部分です。

三つの言葉は、条文では別々に定義されている

「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」は、日常では同じ意味で使われがちですが、法は使い分けていて、会社に課される義務もそれぞれ異なります(ガイドライン2-1の注)。開示請求の対象になるのは、このうち一番狭い三つめです。

言葉条文原文の要旨開示請求とのつながり
個人情報法第2条第1項生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合できるものを含む)など。ガイドライン2-1は、個人に関する情報を、属性に関する事実、判断、評価を表す全ての情報とし、評価情報も含まれるとする出発点。所見や評価の文章も、特定の個人が識別できれば個人情報に入る
個人データ法第16条第3項、第1項個人情報データベース等を構成する個人情報。データベース等とは、特定の個人情報を電子計算機で検索できるように体系的に構成したもの、または、一定の規則で整理し、目次、索引その他検索を容易にするためのものを有するもの(施行令第4条第2項)検索できる状態にない情報は個人データに当たらず、したがって保有個人データにも当たらないので、開示の請求に応じる法的義務は課されないと解される、とQ&A 9-5は述べる
保有個人データ法第16条第4項個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データ。存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるものを除く。ガイドライン2-7は、これらの請求の全てに応じることができる権限を有する個人データ、と言い換える法第33条第1項の開示請求の対象

最後の行の「政令で定めるもの」は、施行令第5条が四つを挙げています。存否が明らかになると、本人や第三者の生命、身体、財産に危害が及ぶおそれがあるもの、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの、国の安全や他国との関係が損なわれるおそれがあるもの、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの、です。ガイドライン2-7の事例は、暴力団等の反社会的勢力や悪質なクレーマーを本人とする個人データ、警察からの捜査関係事項照会で初めて取得した個人データなどで、採用の記録は挙がっていません。

また、「本人」とは、個人情報によって識別される特定の個人です(法第2条第4項)。法第33条の条文に、選考の結果によって応募者を区別する定めはありません。

開示を求められた会社は、何を返すことになるのか

条文が会社に求めるのは、次の動きです。

  • 本人から請求があったら、請求された方法で、遅滞なく開示する。方法は、電磁的記録の提供、書面の交付、その他会社の定める方法(施行規則第30条)。請求された方法での開示が多額の費用を要するなどで困難なときは、書面の交付による。
  • 開示しない旨の決定をしたとき、保有個人データが存在しないとき、請求された方法での開示が困難なときは、遅滞なく本人に通知する(法第33条第3項)。
  • 請求された措置をとらない旨を通知するときは、理由を説明するよう努める(法第36条。努力義務)。

「遅滞なく」に日数の定めは、条文にありません。Q&A 9-12は、理由のない滞りを生じさせないという趣旨で、請求対象のデータを検索・集約する作業に通常必要な期間も考慮した合理的な期間内に開示すれば足りる、としています。

対象は「当該本人が識別される保有個人データ」です。Q&A 9-8は、同じデータに家族の氏名など本人以外の個人情報が含まれていても、それは開示の対象にならないとしています。面接官のメモに他の応募者の名前や比較が書かれている場合に、どう扱うかを考える手がかりになります。また、Q&A 9-7は、「保有する私の情報を全て開示せよ」という請求に対し、会社は対象を特定するに足りる事項の提示を求められ(法第37条第2項)、本人が範囲を特定したら、その範囲で足りる、としています。

五つの記録は、三つの問いでどう分かれるのか

保有個人データかどうかは、記録の名前ではなく、次の三つの問いの答えと、最初の節で見た政令で定める除外に当たるかどうかで分かれます。

  1. 本人は識別されるか。氏名のほか、他の情報と容易に照合して特定の個人が分かる内容を含むか(個人情報か)。
  2. 検索できるように整理された集合物の一部になっているか(個人データか)。
  3. 開示等を行える権限は、自社にあるか(保有個人データか)。

三つを通り、さらに施行令第5条の四つの類型(最初の節)に当たらないものが、開示請求の対象です。採用の記録がどの類型に当たるかは、この記事では判断しません。そのうえで、開示しない場合に当たるかは別の段階として、次の節で読みます。

次の表は、結論を示すものではありません。五つの記録のそれぞれで、答えが分かれる場所と、原文に書かれていること、自社で確かめることを並べた、確認の順序です。

記録答えが分かれる場所原文に書かれていること自社で確かめること
① 応募書類やフォームから起こした項目の値(氏名、学歴、職歴など。人が入力したか、AIが書類から抽出したかを問わない)検索できる形で保存されているかガイドライン2-6は、個人情報データベース等から外部記録媒体や帳票に出力された個人情報を個人データの事例とし、データベース等を構成する前の入力用の帳票等に記載された個人情報を、個人データに当たらない事例とする。2-4は、名刺の情報を表計算ソフト等で入力・整理している場合を、データベース等の事例に挙げる項目の値がATSの応募者の記録にあるのか、共有フォルダの表計算にあるのか。取り込む前の書類や入力前のメモは別に整理する
② AIが作った要約、評価文、スコア応募者の記録に紐付けて保存されているかガイドライン2-1は、評価を表す情報を個人に関する情報に含め、事例として、取得後に付加された個人に関する情報も、新たな情報の付加や照合で特定の個人を識別できる場合はその時点で個人情報に当たるとする。確認したガイドライン本文にAIの語は見当たらず、AIが作ったかどうかで扱いを分けた記載は確認できなかった要約が保存されるのか、その場で消える表示なのか。どの応募者の記録に紐付くか。元の出力と、人が直した版のどちらを残すか
③ 面接官の評価、面接メモ検索できる集合物の一部か。そのうえで、開示しない場合に当たるか評価を表す情報は個人情報に入る(2-1)。2-4は、紙でも、一定の規則で整理・分類し、目次、索引、符号等を付して他人にも容易に検索できる状態に置いているものは該当し、独自の分類で他人には容易に検索できないものは該当しない事例とする。本人以外の個人情報は開示の対象にならない(Q&A 9-8)メモが誰の手元に、どの形式であるか(ATSの評価欄、共有シート、個人のノート)。他の応募者との比較が書かれているか。評価シートとメモを同じ扱いにするか
④ ATSや外部サービスに置かれた記録開示等を行える権限を、自社とサービス提供会社のどちらが持つか委託等で複数の事業者が関わる場合は、契約等の実態によって、どの事業者が開示等に応じる権限を有するかを判断する(2-7の注)。委託元が委託先に自らの判断で開示等を行う権限を付与していないときは、委託元の保有個人データになる(Q&A 1-56)。次の節で読む契約や規約に、開示等についての定めがあるか
⑤ AIへの指示(プロンプト)と出力のログ応募者が識別される内容を含むか。ログが検索できる形か。誰が保管しているか2-4は、ユーザーIDで整理されて保管されているログ情報の電子ファイルを、IDと個人情報を容易に照合できる場合のデータベース等の事例に挙げる。AIサービスの提供会社が保管する場合の読み方は、確認した範囲の原文に書かれていないログがどこに、誰のIDで残るか。応募者の氏名や書類の本文を入力に含めているか。保管期間は何で決まるか

応募者の氏名や応募書類の本文を含む記録なら、一つめの問い(本人は識別されるか)の答えは、はいになります。分かれ目になるのは、二つめの問い(検索できる集合物の一部か)と、三つめの問い(権限は誰にあるか)です。どちらも記録ごとに確かめる部分で、この表の欄から結論は出ません。

ATSやAIのサービスに置いた記録は、誰が開示に応じるのか

ガイドライン2-7の注は、個人データの取扱いについて、委託等により複数の個人情報取扱事業者が関わる場合には、契約等の実態によって、どの事業者が開示等に応じる権限を有しているのかを判断する、としています。Q&A 1-56は、個人データの取扱いが委託される場合、特に定めのない限り委託元の保有個人データになると考えられるが、個別の事例ごとに判断する、と述べます。委託元が委託先に自らの判断で開示等を行う権限を付与していないとき(委託元と委託先の間に取決めがなく、委託先が自らの判断で開示等をできない場合も含む)は、権限を有しているのは委託元で、そのデータは委託元の保有個人データになる、とも述べます。

Q&A 7-53は、クラウドサービスの利用が第三者提供や委託に当たるかは、保存している電子データに個人データが含まれているかではなく、提供事業者において個人データを取り扱うこととなっているかが基準だ、と述べます。開示の権限そのものを述べたものではなく、AIサービスの利用に同じ物差しを当てられるかは、確認した範囲の原文に書かれていません。

ここから先は、原文に書かれていない、自社で確かめる部分です。

  • 契約や規約に、サービス提供会社が自らの判断で応募者に開示等を行える範囲が書かれているか。
  • 応募者から請求を受けたとき、自社が記録を取り出せるか。取り出せる形式(電子ファイル、画面の写しなど)と、依頼してから受け取るまでにかかる時間。
  • サービス提供会社が応募者本人から直接請求を受けた場合に、自社へ知らせる経路。
  • サービス提供会社が自社のために保管する記録と、サービス自身の運営のために持つ記録が、契約上で分かれているか。

預けるデータの範囲と委託の読み方はAI開発の委託先に渡した個人データは、どこまでが「委託」かに、記録の置き場と正本の考え方は採用管理システム(ATS)とAIは何が違うかにまとめています。

面接の評価やメモは、開示しなくてよいと言い切れるのか

条文は、開示しないことができる場合として三つを挙げています。本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、会社の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、他の法令に違反することとなる場合です。条文は、その全部又は一部を開示しないことができる、と書いています。

ガイドライン(通則編)は、二つめの「著しい支障を及ぼすおそれ」について、単なる支障ではなく、より重い支障を及ぼすおそれが存在する例外的なときに限られ、開示すべき保有個人データの量が多いという理由のみでは、一般には該当しないとしています。事例には、試験実施機関が採点情報の全てを開示することで試験制度の維持に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、同一の本人から複雑な対応を要する同一内容の請求が繰り返されて問合せ窓口が占有され、他の業務が立ち行かなくなる場合などが挙がっています。採用選考の評価やメモがこれに当たるかを示した事例は、確認したガイドライン本文の開示の項(3-8-2)に見当たりませんでした。

Q&A 9-11は、質問文に「人事評価や選考に係る個々人の情報など非開示とすることが想定される情報」という言葉が出てきます。回答は、雇用管理情報の開示の請求に応じる手続について、あらかじめ、労働組合等と必要に応じて協議したうえで、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるとして非開示とすることが想定される保有個人データの開示に関する事項を定め、従業者に周知する措置を講ずることが望ましい、というものです。「雇用管理情報」の語は、確認したガイドライン(通則編)本文に見当たりません。応募者の記録がここにいう雇用管理情報に含まれるかは、このQ&Aの文面からは読み取れませんでした。

確認した弁護士の解説のうち2件は、選考に関する個々人の情報を、開示請求の対象外、または開示義務の例外として整理し、その根拠に、厚生労働省の雇用管理分野のガイドラインの事例集を挙げています。この事例集の現在の位置づけは、この記事では確認していません。そのため、この記事は「選考に関する情報は開示しなくてよい」とも「開示しなければならない」とも書きません。

不開示にすると決める場合に、社内で先に決めておくことは、次のとおりです。

  • 判断する人。人事、法務、責任者のどこが決めるか。原文に書かれておらず、自社で決めます。
  • 根拠にする号と、全部か一部か。条文が「全部又は一部」と書いているので、記録ごとに分けて見る余地があります。
  • 本人への通知。開示しない旨の決定、保有個人データが存在しないとき、請求された方法での開示が困難なときは、遅滞なく通知します(法第33条第3項)。理由の説明は努力義務です(法第36条)。
  • 決定と理由の記録。誰が、いつ、どの記録について、何を根拠に決めたか。

請求が届いた日に、先に決まっていないと困ること

請求を受けてから窓口や手順を考えると、「遅滞なく」の中で時間を使います。次の順に、原文に書かれていることと、自社で決めることを分けて確かめます。

  1. 窓口と受付の方法。法第37条第1項は、請求を受け付ける方法を定められるとし、施行令第12条は、定められる事項として、申出先、提出すべき書面の様式その他の方式、本人または代理人であることの確認の方法、手数料の徴収方法を挙げています。定めたときは本人の知り得る状態に置きます(法第32条第1項第3号)。Q&A 9-1は、必ずしもホームページに掲載しなくても、問合せ窓口を設け、問合せがあれば口頭または文書で回答できる体制で足りるとしています。自社では、応募者向けのページや応募フォームの近くに、窓口をどう示すかを決めます。
  2. 本人の確認と代理人。ガイドライン3-8-7は、確認の方法を事業の性質や受付方法に応じて適切なものとし、本人確認のために必要以上に多くの情報を求めないなど、本人に過重な負担を課さないよう配慮するとしています。代理人は、未成年者または成年被後見人の法定代理人と、本人が委任した代理人です(施行令第13条)。自社では、応募時に登録したメールアドレスからの請求をどう確かめるかを決めます。
  3. 請求の対象の特定。応募者が「面接の評価も」「AIの要約も」と書いてきたときに、どの記録を探しにいくか。①から⑤の表を、自社の置き場所に書き換えた一覧にしておきます。法第37条第2項は、会社が対象を特定するに足りる事項の提示を求められるとしつつ、特定に資する情報の提供など本人の利便を考慮した措置をとることを求めています。
  4. 社内の確認先。人事、情報システム、サービス提供会社の窓口、法務や専門家のどこへ、誰が、いつまでに確認するか。原文に書かれておらず、自社で決めます。
  5. 開示の期間。条文に日数の定めはなく、Q&A 9-12は合理的な期間内とします。社内の目安の日数と、本人確認で止まっている間の連絡のしかたは、自社で決めます。
  6. 開示の方法と手数料。ガイドライン3-8-2は、電磁的記録の提供について、可読性・検索性のある形式での提供ができるだけ本人の要望に沿った形で対応することが望ましいとしています。手数料を徴収する場合は、実費を勘案して合理的と認められる範囲内で額を定め(法第38条)、定めたら本人の知り得る状態に置きます(法第32条第1項第3号)。
  7. 開示しない、または存在しないときの通知。前の節のとおり、誰が決め、通知と理由の説明をどの文面で出し、どう記録するかを決めます。

不採用者のデータの保管や削除の期間の考え方は、不採用者の応募者データは、いつ・どこから消すかにまとめています。応募者へのAI利用の伝え方と、人に代える窓口は採用でAIを使うとき、応募者に何をどこまで伝えるかに、面接メモの評価項目と記録の分け方は面接メモをAIに整形させる前に決めておくにあります。

「6か月以内に消去するものは対象外」という説明は、今の条文にあるのか

確認した解説の中に、1年以内の政令で定める期間(政令では6か月)以内に消去することとなる個人データは、保有個人データに当たらず、開示請求の対象にならない、と書くページがありました。この定めは、e-Govで取得した令和3年10月1日時点の法の版(第2条第7項)と、令和3年11月1日時点の施行令の版(第5条)に、確かに載っています。

現行の法第16条第4項と施行令第5条には、消去までの期間による除外の定めは見当たりません。現行の保有個人データの定義から除かれるのは、最初の節で見た、存否が明らかになると公益その他の利益が害される四つの類型です。したがって、「保存期間を短く設定していれば、開示請求の対象外になる」という整理は、現行の条文からは読み取れません。解説を読むときは、更新日と、引いている条番号が現行のものかを確かめてください。

令和8年の改正は、開示請求の定めを変えるのか(未施行)

令和8年7月17日に、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律が公布されました。個人情報保護委員会のページは、施行に向けて政令、規則、ガイドライン等の検討を続けているとしています。e-Govの改正履歴には、この法律による未施行の版が、令和9年1月17日と令和10年7月16日の日付で載っています。この法律の附則第1条は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する、としたうえで、ただし書の第3号で、公示送達や罰則などに関する改正規定を、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する、としています。令和9年1月17日の日付の版は、この第3号の日に対応するものです。令和10年7月16日の日付の版は、附則が「二年を超えない範囲内において政令で定める日」とする規定の期限にあたる日付で、施行日は政令で決まるまで確定していません。この記事は現行の条文を軸にしており、改正後の条文との違いを条文ごとに並べることはしません。取得した版を読み比べた範囲(第16条と第32条から第39条)で言えるのは、次の三点です。

  • この記事が扱う開示請求まわりの条文にも、令和10年7月16日の日付の版では文言が変わる箇所があります。確認した範囲では、第35条に特定生体個人情報の利用停止等などを請求できる場合を定める項が加わること、第37条第2項で会社が本人に特定を求める対象に特定生体個人情報が加わることが変わります(ほかにも変わる箇所があり得ます)。令和9年1月17日の日付の版は、確認した範囲では現行と同じ文言でした。
  • 施行日は、令和9年1月17日の日付の版が公布から6月を経過した日として確定しているのに対し、令和10年7月16日の日付の版は政令で定める日の期限にあたる日付で、確定していません。
  • 改正後の条文の内容は、施行前に、e-Govで該当する施行日の版を開いて確認してください。言い回しの変更が意味を変えるかは、条文の比較だけでは判断しません。

委員会の令和8年7月付けの概要資料(21ページ)の文字情報に、「開示」の語は出てきませんでした。資料が挙げる項目のうち、保有個人データの請求に関わるものは、16歳未満の本人の利用停止等の請求の要件の緩和と、顔特徴データ等の利用停止等の請求の要件の緩和です。政令、規則、ガイドラインの内容は確定していないため、改正後の運用は、確定した条文とガイドラインで確かめてください。

当社の公開ページとの関係

WITHPROJECTSの採用AXの公開ページは、設計の進め方として、AIの出力を誰が確認するか(責任分界)と例外が出たときの動きを決めること、応募者データの保管・利用範囲・削除の扱いを決めることを挙げています。また、応募者の個人情報の取扱いは、個人情報保護法や職業安定法などの法令に沿う必要があり、具体的な扱いは必要に応じて専門家に確認してほしい、と書いています。このページに、応募者からの開示請求への対応は書かれていません。この記事の整理は、一般的な進め方の提案であり、WITHPROJECTSが提供する支援の内容や、法令への適合を示すものではありません。

採用業務全体をAI・ルール・人にどう分けるかは、採用AX(採用のAI化支援)にまとめています。

確認に使った原文と、確認していないもの

  • 個人情報の保護に関する法律(e-Govの現行の版と、令和8年法律第56号による未施行の2つの版。第2条、第16条、第32条から第39条)
  • 同法施行令(e-Govの現行の版。第4条、第5条、第12条、第13条。令和3年11月1日時点の版の第5条も比較)、同法施行規則(第30条)
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(令和8年6月一部改正の表示がある版。2-1、2-4、2-6、2-7、3-8-1、3-8-2、3-8-6から3-8-8)
  • 同委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」(Q1-56、Q7-53、Q9-1、Q9-5、Q9-7、Q9-8、Q9-11、Q9-12)
  • 同委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」と、事務局の概要資料(令和8年7月)

確認していないものは、競合の解説が根拠に挙げる厚生労働省の雇用管理分野のガイドライン・事例集、裁判例、第三者提供記録の開示(法第33条第5項)、訂正等・利用停止等の請求、職業安定法に基づく求職者の個人情報の管理の定め、令和8年の改正に向けて検討中の政令・規則・ガイドラインです。開示するか、どこまで開示するか、不開示にする理由の書き方の個別の判断は、社内の法務や弁護士などの専門家に確認してください。

記録の置き場所を、請求が届く前に書き出したい方へ

応募者の記録がどこにあり、誰が開示に応じる権限を持つのかを、請求が届く前に一覧にしておくと、窓口と確認先を決める材料が揃います。

応募者の記録(AIの要約、面接メモ、ATSの記録)がどこにあり、誰が開示に応じる権限を持つのかを、自社の採用の流れに合わせて整理したい方は、個別相談の予約へお進みください。(個別相談会(30分)の予約ページへ移動します)

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