採用でAIを使うとき、応募者に何をどこまで伝えるか:説明項目と、人に代える窓口の決め方

目次
応募者への一次返信や書類の整理にAIを使い始めると、「AIを使っていることを応募者に伝えるのか」「AIではなく人に対応してほしいと言われたら、誰がどう受けるのか」を、人事側で決める場面が出てきます。この記事は、人事責任者・採用担当の方向けに、応募者へ伝える項目の一覧と、人に代える窓口の決め方を、運用の観点で整理します。
AIを使うこと自体の告知が法令上必要かどうかは、この記事では判断しません。個別の適否は、社内の法務や専門家に確認してください。
先に確認しておきたい、公開資料の記載
ここでは、公開資料の本文を読んで確認できた範囲だけを整理します。
- 個人情報保護法は、応募者の情報のような個人情報を扱う事業者に、利用目的をできる限り特定するよう求めています(第17条第1項)。取得した場合は、あらかじめ公表している場合を除き、速やかに本人へ通知するか公表します(第21条第1項)。
- 同じ法律には、契約書その他の書面(電磁的記録を含む)に記載された本人の個人情報を取得する場合など、本人から直接書面で取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示する定めがあります(第21条第2項)。一定の場合に通知等を要しない規定もあります(第21条第4項)。
- 個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、本人から得た情報から本人に関する行動・関心等の情報を分析する場合は、どのような取扱いが行われているかを本人が予測・想定できる程度に利用目的を特定しなければならない、としています。また、ネットワーク上で個人情報を取得する場合は、送信ボタン等をクリックする前に利用目的が本人の目に留まるよう、配置に留意することが望ましいとしています。採用でのAI利用がこの例に当たるかどうかは、この記事では判断しません。応募者の情報をAIで分析する使い方を考えるときに、参照しておきたい記載です。
- AI事業者ガイドライン(第1.2版・総務省と経済産業省)は、法的な拘束力のないソフトローとして位置づけられています。透明性の項では、関係する人に提供する情報の例として、AIを利用している事実と活用している範囲などを挙げています。一方で、その情報提供はアルゴリズムやソースコードの開示を必ずしも想定するものではなく、プライバシーや営業秘密を尊重し、社会的合理性が認められる範囲で行うとされています。
- 同ガイドラインのAI利用者向けの項は、AIの出力結果を特定の個人への評価の参考にする場合に、AIを利用している旨を評価の対象となる個人へ通知し、人間による合理的な判断のもとで、求めに応じて説明責任を果たすことを挙げています。あわせて、利用するAIの性質に応じ、問い合わせに対応する窓口を合理的な範囲で設置することも挙げています。
- 個人情報保護法は、令和8年7月17日に改正法が公布されています。施行の時期と内容は、この記事では確認していません。条文とガイドラインは、個人情報保護委員会などの最新の情報で確認してください。
応募者に伝える6つの項目
どこまで伝えるかの目安は、応募者が「どの工程で、どんな情報を、AIが何に使い、人がどこで見て、困ったときは誰に連絡するのか」を想像できる粒度です。内部の仕組みの詳細までは、必須とは限りません。
| 項目 | 書くこと | 書き方の例 | 社内で決めておくこと |
|---|---|---|---|
| どの工程で使うか | AIを使う工程を、工程名で書く | 「応募の受付後の一次返信と、面接の日程調整にAIを使っています」 | 実際に使っている工程と、書いた工程が一致しているか |
| 何のデータを使うか | AIに渡す情報の種類 | 「応募フォームの入力内容と、提出書類の内容を、確認の補助に使います」 | 面接の録音・録画など、ほかの情報を渡す工程がないか |
| AIが担うこと | 整理・要約・候補日の提示など、AIの役割 | 「提出書類の内容の整理に使います。合否はAIでは決めません」 | 自社の運用が、書いた内容のとおりか |
| 人がどこで関わるか | 人が確認する場面と、判断する人の立場 | 「選考の結果は、採用担当者が書類を確認したうえで決めます」 | 確認する担当者と、確認するタイミング |
| データの扱い | 利用目的、保管期間、外部の委託先やサービスを使うか | 「応募情報は、選考と採用のご連絡のために利用し、〇か月保管します」 | 個人情報の担当・法務との確認、委託先との取り決め |
| 問い合わせ先と、人に代える窓口 | 連絡先、受付方法、回答までの目安 | 「AIではなく担当者の対応を希望する場合は、【問い合わせ先】へご連絡ください」 | 窓口の担当者、回答期限、記録の方法 |
文例は書き方のイメージです。法的に十分であることを示すものではなく、自社の運用と合わない文は使えません。
書かないほうがよいこと
- 「AIは公平に判断します」「偏りはありません」のように、運用で確かめていない断定
- 実際には人が見ていない工程を、「人が確認します」と書くこと
- 守れない回答期限や、対応できない範囲の約束
- 運用が変わったのに、更新されていない説明
どこに、いつ載せるか
一つの場所にまとめて書くより、応募者が進む場面ごとに、必要な分だけ届くようにします。
| 場面 | 伝えること | 置き場所の例 |
|---|---|---|
| 募集の段階 | AIを使う工程の概要、問い合わせ先 | 募集要項、求人ページ、採用サイト |
| 応募の入力時 | 利用目的、AIを使う工程、データの扱い | 応募フォームの送信ボタンの前、または1回のクリックで開けるリンク先 |
| 応募の受付直後 | 受付の完了、自動返信であること、人への連絡方法 | 自動返信メール |
| 日程調整・面接の案内 | 日程調整にAIを使う場合はその旨 | 案内メール、案内ページ |
| 結果の連絡 | 問い合わせ先 | 結果連絡のメール |
求人媒体やエージェントを経由する応募は、自社の応募フォームを通らないことがあります。どの経路から応募しても、少なくとも1か所で説明が届くかを確認します。
人に代える窓口の決め方
ここでいう「人に代える窓口」とは、AIによる対応(一次返信、日程調整、書類の整理など)の代わりに、人が対応するよう応募者が求めたときに、それを受ける連絡先と、その後の運用のことを指す、この記事での呼び方です。
| 決めること | 選択肢の例 | 考えどころ |
|---|---|---|
| 人に代える範囲 | すべての工程/自動返信だけ/書類の確認だけ | 代えられない工程があるなら、募集の段階で伝える。件数と担当者の人数から、受けられる範囲を見積もる |
| 受け付け方 | 問い合わせ専用の連絡先/応募フォームの選択欄/面談の冒頭 | 応募者が迷わない場所に置く。フォームで受けるなら、選択内容を誰が見るかを決める |
| 担当者と代理 | 採用担当者個人/チームの共通窓口 | 不在時の代理を決める。窓口の返信を自動返信に任せない |
| 回答と対応の目安 | 〇営業日以内に連絡 | 守れる期限だけを書く。件数は分かる範囲で記録し、未計測は未計測と書く |
| 選考での扱い | 選考には影響させない/代替の方法だと日程が変わる | 影響があるなら先に伝える。影響させない運用にするなら、評価に関わる人へ周知する |
| 記録 | 希望の有無、対応日、担当者 | 応募者の情報になるため、保管期間と閲覧できる人を決める |
| 委託先・ツール提供元との分担 | 窓口は自社/一次受けは委託先 | 委託先が応募者の連絡を受けるなら、自社に戻す条件を決める |
問い合わせで聞かれやすいことは、答える範囲を先に決める
- AIをどの工程で使っているか:公開している説明の範囲で答える
- 自分の応募情報がどう使われたか:利用目的の範囲で答える。個人情報の担当者へつなぐ流れを決めておく
- 不合格の理由:開示するか、どこまで答えるかは、法務などと確認して社内で決める。担当者ごとに答えが分かれないよう、定型の回答と、判断を仰ぐ先を用意する
窓口の型は、次の条件で選ぶ(判断条件)
| 型 | 内容 | 運用の負担 | 応募者から見た分かりやすさ | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| A:連絡先を載せる | 募集要項に問い合わせ先を書き、人の対応の希望は個別に受ける | 小さい | 申し出る手間がかかる | AIの使い方が返信や日程調整に限られ、応募件数も多くない |
| B:応募時に選べる | 応募フォームに「担当者の対応を希望する」の選択欄を置く | 中程度。応募の時点で振り分ける仕組みが要る | 最初から分かる | AIを使う工程が複数あり、振り分けの運用を作れる |
| C:工程ごとに人の経路を置く | 工程ごとに、人の連絡先と代わりの手順を用意する | 大きい。手順を維持する人が要る | 工程ごとに分かる | AIが書類の整理や評価の補助まで関わる |
どの型でも、窓口を置いたあとに、希望が来たときの動きを一度試して確かめます。
決めていく順番(手順)
手順1:AIを使っている(使う予定の)工程を書き出す。採用業務全体の整理は、採用AXとはの流れが参考になります。
手順2:各工程で扱うデータと、委託先や外部サービスに渡るかを確認する。委託先への確認は、採用AIの委託先の選び方の観点を使えます。
手順3:利用目的を、応募者が想像できる粒度で文章にする。個人情報の担当者や法務の確認を受ける。
手順4:載せる場面と置き場所を決める(上の表)。
手順5:人に代える窓口の型を選び、担当者・期限・記録を決める。
手順6:説明と実際の運用が一致しているかを、運用を始めたあとも見直す。工程やツールを変えたときは、説明も更新する。利用目的を変更した場合は、変更後の内容を本人に通知または公表することが定められています(第21条第3項)。
こうなると、応募者の不信につながる(よくある失敗パターン)
- 募集要項には何も書かれておらず、AIからの返信が来てはじめて分かる
- 「AIは補助として使います」とだけ書かれていて、どの工程か分からない
- 人が確認すると書いてあるのに、実際には誰も見ていない工程がある
- 人への連絡先が書いてあるのに、問い合わせへの返信が自動返信だけで終わる
- 委託先やツールを変えたのに、説明が古いままになっている
- 窓口の記録がなく、同じ応募者に担当者ごとに違う回答をしてしまう
- 不合格の理由を聞かれたときの方針がなく、その場の判断で答えている
事前の整理が済んでいない場合は、採用AI化の依頼前に、人事が整理しておく5つのことから始めると、対象業務や応募者データの扱いを整理しやすくなります。
WITHPROJECTSは、採用AXを、採否そのものをAIに任せることを意味しないものとして、公開ページで説明しています。
次の一歩
採用業務のどこをAI化できるか、業務フローから整理したい方は、個別相談の予約へお進みください。(個別相談会(30分)の予約ページへ移動します)

