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不採用者の応募者データは、いつ・どこから消すか:採用管理システムやAIに預けた分まで決めておく

AI

「不採用の応募者の履歴書は、期間が過ぎたらシュレッダーにかける」。紙だけの管理であれば、これで運用は回ります。ところが、応募者の情報が採用管理システム、メールの添付、面接メモ、AIによる要約やスクリーニングの履歴、外部サービスのサーバーにも残っている場合、「消した」と言えるのはどこまででしょうか。この記事は、人事責任者・採用担当の方が、不採用者データの保管と削除のルールを、システムやAI、委託先に置いた分まで広げて決めるための整理です。個別の取扱いが法令に合っているかどうかや、特定の保管期間の正否は扱いません。

不採用者データの保管と削除の運用とは

不採用者データの保管と削除の運用とは、不採用にした応募者の情報について、何のために、どこまで持つか、いつ消すか、どの置き場所から誰が消すか、消したことをどう記録するかを、あらかじめ決めて回す仕組みを指します。期間を決めることだけでなく、期間が来たときに実際に消せる状態にしておくことまでを含みます。

法律が決めていること、決めていないこと

以下は、e-Govで公開されている条文の原文を確認し、趣旨を要約したものです。自社の取扱いが適合しているかどうかは、専門家や所管の窓口に確認してください。

  • 個人情報保護法第22条は、個人情報取扱事業者に対し、個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めることを求めています。「努めなければならない」という書き方であり、「何か月」と保管期間を一律に定める規定ではありません。「利用する必要がなくなったとき」がいつなのかは、利用目的ごとに自社で考えることになります。
  • 同法第17条は利用目的をできる限り特定すること、第21条は取得した個人情報の利用目的を、あらかじめ公表している場合を除き、速やかに本人へ通知または公表することを定めています。保管期間は、この利用目的とあわせて整理すると決めやすくなります。
  • 同法第23条は個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を、第25条は取扱いを委託する場合に委託先へ必要かつ適切な監督を行うことを定めています。委託先やクラウドに置いた応募者データの扱いは、これらの条文との関係で確認が必要になります。
  • 職業安定法第5条の5は、労働者の募集を行う者などが求職者等の個人情報を収集・保管・使用するとき、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして収集し、その目的の範囲内で保管・使用することを定めています(本人の同意がある場合など正当な事由がある場合の例外があります)。あわせて、個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じることも求めています。
  • 採用後の従業員に関する書類は、労働基準法第109条のように、労働関係の重要な書類の保存を定める規定との関係を確認する必要があります。不採用者のデータとは分けて整理し、どの書類が対象になるかは専門家に確認してください。

つまり、「何か月が正しい」という答えを探すより、自社が何のために持つのかを決め、その目的が終わったら消せる状態にしておくことが、整理の出発点になります。

不採用者データは、どこに残っているか

削除のルールは、まず置き場所を洗い出さないと機能しません。次の表で、自社にあてはまる行を確認します。

置き場所例見落としやすい点先に決めること
応募の入口応募フォーム、応募メール、求人媒体・エージェントの管理画面受信箱や送信済みフォルダの添付ファイル誰がいつ整理するか
採用管理システム応募者情報、選考の状況、評価メモ、添付書類「アーカイブ」「非表示」と「削除」が別の操作になっていることがある削除操作の方法と、実行できる人
AI・自動化の処理書類の要約、項目の抽出、スクリーニングの補助、チャットの履歴入力した書類、出力された要約、処理の記録が、元のデータとは別の場所に保持される場合がある入力・出力・記録のそれぞれの保持と削除の手段
面接の記録録画、録音、文字起こし、面接官のメモ個人のPCやチャットに複製される置き場所の一本化
表計算・共有フォルダ応募者一覧、集計用の表、共有メモコピーが増え、どれが正本か分からなくなる正本の決定と、コピーの扱い
バックアップ・ログシステムのバックアップ、アクセスの記録本体を消しても、しばらく残ることがある消えるまでの時期の把握と記録
委託先・外部サービス運用を任せた会社、クラウド、AIサービス契約終了後の返却・消去が決まっていない委託先への確認項目(後述)
紙履歴書、名刺、手書きメモキャビネットや机の中に残る廃棄の方法と時期

そもそも持つ項目を絞ることも、削除の負担を下げる方法です。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」には、事業主が独自に応募用紙やエントリーシートの項目を設定する場合、適性と能力に関係のない事項を含めないよう留意する旨が書かれています。

保管期間の決め方:期間より先に、目的を分ける

期間の数字を決める前に、「何のために持つのか」を分けます。目的が違えば、持つ期間も、持つ範囲も変わります。

持つ目的例期間を考えるときの観点
選考結果の問い合わせや書類返却への対応応募者からの連絡への返答連絡が想定される期間はどこまでか
再募集やタレントプールとしての連絡次の募集時に本人へ案内する本人への利用目的の通知・公表や、同意の取り方を専門家と確認する
選考の振り返り・基準の見直し評価の記録を集計する個人が分かる形のまま持つ必要があるか
問い合わせや争いへの備え選考経緯の確認必要な範囲と期間を自社の方針として決め、専門家に確認する

期間を延ばしてよいかを考える判断条件

  • 利用目的を決めており、応募者に通知または公表している
  • 期間が来たら消す担当者と手段が決まっている
  • アクセスできる人が限られ、閲覧の記録が残る
  • 目的が終わったデータを、目的の違う用途(AIの学習や分析など)に回さない取り決めがある

不採用者のデータを分析に使えるか、AIに学習させてよいかは、利用目的の範囲に関わるため、専門家に確認してください。他社の運用例として紹介される保管期間の目安は、自社の目的に当てはまるとは限りません。自社の期間は、上の表の目的から決めます。

削除の運用を決める手順

手順1:置き場所の台帳を作る。上の表の行ごとに、システム名、データの種類、管理する担当者を一覧にします。

手順2:期間の起点と満了日を決める。たとえば「不採用を連絡した日」「選考の終了日」など、起点を一つに決めます。システム側に満了日を持たせられるかも確認します。

手順3:削除の範囲と方法を決める。本体だけでなく、添付ファイル、AIへの入力と出力、記録、コピーを対象に入れます。バックアップは、すぐに消せない場合に、いつ消えるかを把握して記録に残します。

手順4:担当者と頻度を決める。誰が満了日を確認し、誰が削除し、誰が確認するのかを分けます。担当者の異動があっても止まらないよう、役割名で書いておきます。

手順5:削除の記録を残し、定期的に抜き取りで確かめる。記録だけでなく、実際に消えているかを画面で確認する日を決めます。

削除の記録に残す項目

項目書くこと注意したい点
対象の特定応募者ID、応募日、削除の範囲氏名を記録に残すかどうかは方針で決める。識別番号で管理する方法もある
実施日・実施者いつ、誰が行ったか確認者を別の人にする
置き場所と方法どのシステム・フォルダから、どの操作で消したか「非表示」を削除として記録しない
残るものバックアップや委託先に残るデータと、消える予定の時期予定の時期の根拠(委託先の回答など)も残す

AI・外部サービスに預けたデータの確認項目

AIサービスや採用管理システム、委託先に応募者データを預ける場合は、導入前に、次の点を文書で確認します。個人情報保護法第25条が求める委託先の監督を、自社で説明できる形にしておく意味もあります。

確認すること聞き方の例回答があいまいなときの対応
保持する範囲入力した書類、出力、処理の記録のうち、何をどこに保持するのか範囲が分かるまで、実際の応募者データは入れない
削除の手段自社の管理画面から消せるのか、依頼が必要なのか。依頼の場合は完了までの流れ依頼の窓口と手順を書面で受け取る
バックアップ本体の削除後、バックアップからはいつ消えるのか消えるまでの時期を記録に残す
他の目的での利用サービスの改善やモデルの学習に使うのか。使わない設定があるのか設定の有無を契約書や規約と照らして確認する
再委託再委託先はあるのか。データはどの事業者のもとに置かれるのか一覧の提示を求める
契約終了時返却・消去の方法と、完了を示す書面はあるのか終了時の取扱いを契約に入れる

契約書や利用規約の読み方、確認の範囲は、専門家に相談してください。

本人から削除を求められたとき

同法第35条第5項は、本人が、自分が識別される保有個人データを事業者が利用する必要がなくなった場合などに、利用停止等(消去を含みます)を請求できることを定めています。請求に理由があると判明したときは、一定の例外を除き、必要な限度で遅滞なく対応することが事業者に求められます。

請求が来てから考えるのでは遅れます。受付の窓口、本人であることの確認、対応の手順、対応した記録の残し方を、先に決めておきます。請求への個別の対応は、専門家に確認してください。

うまくいかない(失敗する)パターン

  • 保管期間だけを決め、システム上の削除操作や担当者を決めていない
  • 本体は消したが、AIの入力履歴、バックアップ、メールの添付に残っている
  • 「アーカイブ」や「非表示」を削除と同じ意味で扱っている
  • 削除の記録がなく、問い合わせを受けても答えられない
  • 委託先との契約終了時の消去が決まっていない
  • 担当者の異動で、満了日の確認が止まる

社内で書き出す5行

項目書くこと
置き場所の一覧システム、フォルダ、AIサービス、委託先、紙のどこに応募者データがあるか
目的と期間何のために、いつまで持つか。目的ごとに分ける
削除の担当と頻度誰が満了日を確認し、誰が消し、誰が確認するか
削除の記録何を、いつ、どの方法で消したか。残るものと消える時期
委託先への確認保持の範囲、削除の手段、バックアップ、契約終了時の扱い

最初から全行を埋める必要はありません。空いている行が分かるだけで、社内で決めること、委託先に確認することが分けられます。

当社の採用AXについて

この記事は、採用業務のAI化に取り組むWITHPROJECTSが作成しています。当社の採用AXの設計の進め方には、応募者データの保管・利用範囲・削除の扱いを決める手順が含まれています。個別の法令の適否は、専門家や所管の窓口に確認していただく前提です。

採用業務全体の設計は採用AXとはに、委託先を比べる軸は採用AIの委託先の選び方に、依頼の前に整理しておくことは採用AI化の依頼前に、人事が整理しておく5つのことにまとめています。

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