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適性診断(初任・適齢・特定)の受診漏れを防ぐ:区分ごとの起算日を運転者台帳で持ち、結果を指導につなげる

AI(DX AX)

「適性診断は受けさせているはず」と思っていても、雇入れ、65歳到達、事故という別々のきっかけで受診が必要になるため、日付を頭で覚えていると抜けが出ます。この記事は、運送会社の運行管理者が、運転者ごとの受診の対象と時期を台帳と期限で管理する方法と、受けた結果を教育や日々の声かけにつなげる観点を、運用の整理としてまとめたものです。対象は一般貨物自動車運送事業者等の運転者です。旅客自動車運送事業や貨物軽自動車運送事業は定めが別にあるため、ここでは扱いません。個別の運転者について受診が必要かどうかの判断は、この記事ではしません。

運行管理者の仕事の全体像は運行管理者の役割と毎日やることにあります。この記事は、適性診断の受診管理だけを取り上げます。

誰が、いつまでに受けるか:区分ごとに「数え始める日」が違う

貨物自動車運送事業輸送安全規則の第10条第2項は、事故を引き起こした運転者、運転者として新たに雇い入れた者、高齢者(65歳以上)に対して、特別な指導を行い、国土交通大臣の認定を受けた適性診断を受けさせなければならないと定めています。運行管理者の業務にも、運転者に適性診断を受けさせることが挙げられています(第20条第1項第14号の2)。

受診の時期は、告示の「指導及び監督の指針」第二章の4に区分ごとに書かれています。次の表は、その要旨を、事業者が控える日付の観点で並べたものです。

区分対象(要旨)受診の時期(要旨)事業者が控える日付
初任診断運転者として新たに雇い入れた者で、初めて乗務する前3年間に初任診断を受けたことがない者初めて乗務する前。やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内雇入れ日、選任日、初乗務の予定日、過去の初任診断の受診年月日
適齢診断高齢運転者(65歳以上)65歳に達した日以後1年以内に1回、その後3年以内ごとに1回。65歳以上の者を新たに選任した場合は選任の日から1年以内生年月日、選任日、前回の受診年月日
特定診断(ⅠとⅡ)事故惹起運転者事故を起こした後、再度乗務する前。やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内事故の発生日、事故の程度、事故前の事故の有無

特定診断の対象となる事故惹起運転者は、告示で、死者または重傷者を生じた事故を引き起こした運転者、および、軽傷者を生じた事故を引き起こし、かつ事故前の3年間に事故を引き起こしたことがある運転者とされています。特定診断ⅠとⅡは、事故の程度と、事故前の1年間に事故を引き起こしたことがあるかどうかなどで分かれます。

省令の第10条第2項第1号は「死者又は負傷者が生じた事故を引き起こした者」と書き、告示は特定診断の対象を事故惹起運転者の区分で書いています。なお、省令の「事故を引き起こした者」について、国土交通省の「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」は、運転者等台帳の記載に関する解釈(第9条の5の1)を準用するとしており、その解釈は、原則として、その運転者が事故の発生に最も大きな責任を有する場合(いわゆる第1当事者)を指す、としています。書き方の違いと併せて、事故が起きたときは、省令・告示・解釈の原文を並べて当てはめ、迷う場合は所管の運輸支局に確認してください。

同じ人でも、初任診断と初任の特別な指導は、除外の条件が違う

告示では、初任診断が不要になる条件(初めて乗務する前3年間に初任診断を受けたことがある)と、初任運転者への特別な指導が不要になる条件(初めて乗務する前3年間に他の一般貨物自動車運送事業者等で運転者として常時選任されたことがある)が、別の文言で書かれています。台帳や期限一覧では、この2つを別々の欄にしておくと、片方だけ見落とす事態を避けやすくなります。

運転者として新たに雇い入れた人が65歳以上の場合は、告示の文言だけを見ると、初任診断と適齢診断のどちらにも当たりうる書き方です。この点について、前述の「解釈及び運用について」(最終改正 令和8年6月26日)の第10条の解釈は、新たに雇い入れた者が65才以上である場合には、適齢診断を受診させたことをもって、初任診断を受診させたものとみなして差し支えない、と示しています。同じ解釈は、新たに雇い入れた者が事故を引き起こした者に当たる場合は、特定診断ⅠまたはⅡをもって初任診断を、事故を引き起こした者に当たり、かつ65才以上の場合は、特定診断ⅠまたはⅡをもって初任診断と適齢診断の両方を、受診させたものとみなして差し支えない、とも示しています。これらが述べているのは受診させる診断の扱いで、受診の時期の数え方や特別な指導には触れていません。台帳や期限一覧には、雇入れ時に確認した年齢と事故歴、それに基づいて受診させた診断の区分を記録しておき、個別の運転者への当てはめや時期の数え方は、運輸支局や受診先の診断機関に確認してください。

台帳に何を持たせるか

運転者等台帳には、運転者について、指導の実施と適性診断の受診の状況を記載する欄が省令で定められています(第9条の5第1項第9号)。台帳は、運転者の属する営業所に備え置くものとされ、運転者でなくなったときは、その年月日と理由を記載して3年間保存するとされています(同条第2項)。

告示は、適性診断を受けさせたら、受診年月日と適性診断の結果を記録した書面を台帳に添付すること、特別な指導を行ったら、指導を実施した年月日と具体的な内容を台帳に記載する(または書面を添付する)ことを求めています。

つまり、台帳に残すべきものは「いつ受けたか」だけではなく、「結果の書面」と「それを受けて何を指導したか」までが一続きです。そのうえで、次の期限を先回りして見るための一覧は、法定の様式ではなく、自社の運用として別に作るものです。

その一覧に持たせる日付の多くは、台帳にもともと載る項目から引けます。台帳の記載事項には、運転者等の氏名・生年月日・住所(第9条の5第1項第3号)、雇入れの年月日と運転者等に選任された年月日(同項第4号)、事故を引き起こした場合のその概要(同項第6号)があります。事故の概要について、国土交通省の解釈及び運用は、事故の発生日時、発生場所、概要(損害の程度を含む)を台帳に記載させるとしています。生年月日は65歳に達する日の算出に、雇入れと選任の年月日は初任診断と新規選任の適齢診断の起算に、事故の発生日時と損害の程度は特定診断の起算と区分の当てはめに使えます。一覧は、こうして台帳の項目から引いた日付に、次回の期限日を足して持つ形にできます。

一覧に持たせる項目何のために更新のきっかけ
氏名、所属営業所、生年月日65歳に達する日の算出雇入れ、異動
雇入れ日、選任日、初乗務の予定日初任診断の期限の算出雇入れ、選任
過去の初任診断の受診年月日(確認した書面)初任診断が必要かの判断材料雇入れ時の確認
雇入れ時に確認した年齢と事故歴、受診させた診断の区分適齢診断や特定診断で初任診断とみなす扱いの確認結果を残す(解釈・運用の範囲)雇入れ時
運転記録証明書の取得日と事故歴の有無雇入れ前の事故歴の把握雇入れ時
診断の区分、受診年月日、結果書面の保管場所台帳への添付の漏れ防止受診のたび
次回の期限日先回りの予約受診のたび
事故の発生日、程度、事故前の事故の有無特定診断の要否と区分の当てはめ事故のたび
結果を受けた指導の実施日、実施者、内容結果の活用の記録指導のたび

雇入れ時の事故歴は、自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書や運転記録証明書などで把握し、事故惹起運転者に当たるのに特定診断を受けていない場合は受診させることと、告示に書かれています。

期限日の出し方(架空の例)

次の表は、期限日の出し方を示すための架空の例です。実際の数え方は、自社の運用に合わせて、所管の運輸支局に確認したうえで決めてください。

区分起算に使う日管理上の期限日の置き方例(架空)
初任診断初乗務の予定日予定日の前日までに受診できるよう、受診日を先に確保する4月8日に初めて乗務する予定なら、4月7日までに受診。前職での初任診断が3年以内にあれば、その受診日が分かる書面を確認
適齢診断65歳に達した日「達した日」を誕生日とするか前日とするかを確認し、確認が取れるまでは早いほうで管理する。その後は前回の受診日を起点に次回の期限日を入れる5月20日に65歳になる運転者は、翌年の5月20日より前を期限として管理
特定診断事故の発生日再度乗務する前。乗務割に入れる前に、受診の有無を確認する6月3日に事故なら、再乗務の前に受診。区分は告示で当てはめる

告示が乗務開始後1か月以内の受診を認めているのは「やむを得ない事情がある場合」です。診断機関の予約が取りにくいから、あるいは次の一括受診日を待つから、という理由を常態にせず、予約は期限の前に取る前提で段取りを組みます。

受診漏れが起きやすい場面と、先に決めておくこと

  • 雇入れのとき:初乗務の日から逆算して受診日を確保する。前職での初任診断の有無と運転記録証明書を、雇入れの手続の一部として確認する。あわせて、65歳以上かどうかと事故歴から、受診させる診断を決めて記録する。
  • 65歳が近づいたとき:生年月日から、半年前に一覧で拾えるようにしておく。65歳以上の人を新たに選任した場合も、一覧に入れる。
  • 事故が起きたとき:事故の連絡が運行管理者に届いた時点で、台帳に事故の日付と程度を入れ、再度乗務させる前に特定診断の区分を当てはめる。
  • 受診先を決めるとき:国土交通省が公表している適性診断の認定機関の一覧では、機関ごとに認定を受けている診断の区分が異なります。特に特定診断Ⅱは、実施する機関が限られているため、事故が起きてから探すのではなく、先に受診先を確認しておく。
  • 営業所が複数あるとき:台帳は運転者の属する営業所に備え置くものなので、期限の一覧は本社でも見られるようにし、更新は誰が行うかを決める。
  • 退職・転籍のとき:運転者でなくなった年月日と理由の記載を、期限一覧の更新と同じ手順にする。

結果を、教育と日々の声かけにつなげる

受診させて終わりにしないための、告示の記載を整理します。

告示の第一章は、指導及び監督の内容の一つとして、適性診断その他の方法で運転者の運転適性を把握し、個々の運転者に自らの運転行動の特性を自覚させることを挙げています。第二章は、診断の結果から分かった運転行動の特性も踏まえ、運転者と話し合いをしつつ、きめ細かな指導を行うことを求め、運転者としてのプライドを傷つけないよう配慮することにも触れています。

区分結果の使い道(告示の記載の要旨)台帳に残すもの
初任診断初任運転者への特別な指導の際に、診断結果の運転行動の特性を踏まえて話し合う。特別な指導は、初めて乗務する前に実施する(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内)指導の実施年月日と内容
適齢診断高齢運転者への特別な指導は、診断の結果を踏まえ、加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた安全な運転方法などを、運転者が自ら考えるよう指導する。結果が判明した後1か月以内に実施する指導の実施年月日と内容
特定診断事故惹起運転者への特別な指導(事故の事例の分析に基づく再発防止対策などを含む)の際に、診断結果の運転行動の特性も踏まえる。実施は再度乗務する前(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内)指導の実施年月日と内容

適齢診断は、結果が判明してからの指導の期限があるため、受診日だけでなく、結果が届いた日も一覧に入れておくと、指導の予定を組みやすくなります。

日々の声かけに使う場合は、次の点に注意します。これは告示に書かれた手順ではなく、自社の運用として決める部分です。

  • 適性診断は運転の可否を診断するものではない、と国土交通省中部運輸局の資料は示しています。点数や所見だけで、乗務の可否や配置を決めない。
  • 診断票の所見のうち、運転者本人と話して納得した1つか2つを、乗務前の声かけの観点にする。点呼で確認すべき事項の代わりにはしない。
  • 診断票は運転者個人の特性についての情報なので、見る人、保管場所、運転者本人への説明を、社内の規程に沿って先に決めておく。他の運転者に聞こえる場で所見を話さない。

国土交通省中部運輸局が管内の運輸支局長あてに出した通達(令和3年11月11日)は、管内の関係事業者に対し、受診対象者の有無の確認、雇入れ日や生年月日の把握による受診期日の特定と受診日の計画、受診結果を用いた指導の計画的な実施を徹底するよう求めています。この通達は同局管内向けのものですが、本記事の台帳と一覧の考え方と同じ方向です。

表計算で足りる場合と、仕組みに寄せる場合の判断条件

表計算の一覧と月に一度の見直しで足りる場合:

  • 運転者が少なく、営業所が1つで、入れ替わりも少ない
  • 事故や異動の連絡が、運行管理者に必ず届く流れになっている
  • 台帳への添付と一覧の更新を、同じ人が同じ日に行える

仕組みに寄せたほうがよい場合:

  • 営業所が複数あり、一覧と台帳が別の場所にある
  • 運転者の入れ替わりが多く、雇入れ時の確認が人によってばらつく
  • 一覧の更新が人の記憶頼みで、期限の通知が届かない
  • 結果書面の添付と、指導の記録が、後回しになりやすい

通知の機能を持つ運行管理のサービスもありますが、通知だけでなく、台帳への記載、結果書面の保管、指導の記録まで一続きで残る形になっているかを確かめてください。

うまくいかないパターン

  • 期限の一覧だけがあり、台帳に受診年月日と結果の書面が添付されていない
  • 65歳以上の人を新たに選任したとき、適齢診断の対象として一覧に入れ忘れる
  • 前職での初任診断の有無を確認せず、確認の方法が人によって違う
  • 事故の連絡が運行管理者に届かず、再度乗務させる前の受診が間に合わない
  • 受診しただけで、結果の書面が引き出しの中に残り、指導に使われない
  • 結果の点数で、乗務の可否や配置を決めてしまう
  • 乗務開始後の受診を例外ではなく常態にしてしまう

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