AI-OCRで読み取った結果は、スキャナ保存の条文ではどこに当たるか:画像・検索項目・帳簿との関連を分けて読む

目次
顧問先が紙の領収書や請求書を持ち込む。AI-OCRで読み取れば、日付・金額・取引先が自動で入る。確認した解説ページの中には、そう紹介するものがあります。ただ、所長が導入を決めるときに知りたいのは、その「読み取った文字」が、スキャナ保存を定めた条文のうえで何に当たるのかです。保存されているのは画像なのか、文字なのか。読み取った文字を直したとき、それは何かの「訂正」になるのか。顧問先の紙を事務所が預かって読み取るとき、保存する主体は誰なのか。
この記事は、製品の比較でも、読み取り精度の話でもありません。電子帳簿保存法の条文と施行規則、国税庁の取扱通達、国税庁の一問一答を原文で読み、AI-OCRの読み取り結果が「どの要件の話に関わり、どの要件の話には出てこないか」を分けて書いたものです。ここに書くのは条文の読み方の一例であり、特定のシステムや取引が要件を満たすかどうかの判断ではありません。適否は、所轄の税務署、税理士、システムの提供者に確認してください。
読んだのは、電子帳簿保存法の第4条第3項と第2条第4号、同法施行規則の第2条第2項・第5項・第6項・第7項、国税庁「電子帳簿保存法取扱通達」の4-3・4-9から4-12・4-23から4-28・4-30、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)です。e-Govの法令検索で取得した施行規則は、令和7年財務省令第28号による改正後の、2025年4月1日に施行された版です。2027年1月1日に施行される版も取得して比べたところ、第4条第3項の文言は同じで、施行規則第2条第6項は、条番号を引く括弧書きの字句が一か所変わるだけで、各号の要件の文言は同じでした(確認日 2026年10月15日)。
取扱通達は、国税庁のサイトに載る全体版のPDF(30頁)を2026年10月15日に取得して読みました。同じ国税庁のページに載る改正の履歴は、最後が令和5年6月23日で、それ以降の改正は、このページ上では確認できませんでした。通達が引く施行規則の項・号(第6項第2号ハ(1)、第3号、第5号)は、取得した施行規則の本文でも同じ位置にあります。一問一答が参照している通達の番号(4-24・4-25・4-26・4-30)も、この版にあります。
先に結論:検索の項目までは位置づけを考えられる。訂正削除の履歴と帳簿との関連は、原文から決まらない
結論から書きます。次の五点は、読んだ原文の範囲での整理です。原文に書かれていることと、事務所側の読み方や、原文から決まらないことを分けています。
- 原文に書かれていること。条文が保存の対象にしているのは、スキャナで書類の記載事項を記録した電磁的記録です。読み取った文字を保存の対象とする書き方は、条文・通達・一問一答の読んだ範囲にありません。「OCR」の語も、これらには出てきません。
- 検索の項目(第5号、通達4-30、問41)は、読み取り結果の位置づけを考えやすい場面です。原文が求めるのは、日付・金額・取引先を検索の条件に設定できることで、問41は「手入力するなどして」設定できるようにする、と書いています。AI-OCRで取り出した文字を、この三項目の値を用意する手段の一つと見るのは、問41の文言からの読み方の一例で、原文がAI-OCRに触れているわけではありません。
- 訂正削除の履歴(第2号ハ、通達4-23から4-25)は、読み取り結果の修正が当たるかどうかが、原文から決まりません。通達は「訂正又は削除」の対象を、保存されている電磁的記録と、スキャナで読み取った書面の情報で定め、書面の情報を損なわない画像の情報の訂正は含まれない、としています。AI-OCRの読み取り結果の修正には触れていません。システムの提供者と所轄への確認事項になります。
- 帳簿との関連性(第3号、通達4-27)も、読み取り結果の位置づけは原文に書かれていません。通達が例示するのは、重要書類と帳簿の双方に伝票番号などを付し、その番号で双方を確認できる方法です。読み取った項目を仕訳へ引き継ぐ運用が確認の手段になるかは、事務所側の読み方の一例にとどまります。
- 保存義務者は、条文上は国税に関する法律の規定により保存をしなければならないこととされている者です。事務所が顧問先の紙を預かって読み取る場合の役割分担は、条文と一問一答には書かれておらず、通達も、帳簿書類の電子計算機処理を会計事務所に委託する場合は書いていても、スキャナ保存の読み取りは書いていません。事務所が整理して確認する事項です。
条文にも通達にも「OCR」の語は出てこない:何について書いた文書かを確かめる
電子帳簿保存法の第4条第3項は、保存義務者が、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く)の全部又は一部について、書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、その電磁的記録の保存をもって書類の保存に代えることができる、と書いています。施行規則の第2条第5項は、この「財務省令で定める装置」をスキャナとしています。
ここで条文が使う語は、「保存義務者」「国税関係書類」「電磁的記録」「スキャナ」です。e-Govの法令検索で取得した法と施行規則の本文を語で検索すると、「OCR」「光学」「テキスト」「画像」の語は出てきません。国税庁の取扱通達の全体版にも、「OCR」「光学」「テキスト」の語は出てきません。国税庁の一問一答【スキャナ保存関係】も、PDFから本文のテキストを取り出して語を検索した範囲では、「OCR」の語は出てきません。AI-OCRという手段は、条文・通達・一問一答の語には登場しない、ということです。
この記事で使う語を決めておきます。「読み取り結果」とは、AI-OCRが画像から取り出した文字(日付、金額、取引先名など)のことです。「画像」は、スキャナで書類を読み取って保存するデータです。一問一答は、これを「スキャン文書」「スキャナで読み取った画像データ」と呼んでいます。読み取り結果がその電磁的記録の一部なのか、別の記録なのかは、読んだ範囲では書かれていません。
四つの場面に分けて、条文に当てはめる
読み取り結果が関わりうる場面を、施行規則第2条第6項の各号に沿って四つに分けます。右端の列は、読んだ原文から読み取れなかった点です。
| 場面 | 条文・通達・一問一答に書かれていること | 読み取り結果との関係 | 原文から読めなかった点 |
|---|---|---|---|
| 保存する画像 | 第1号は、記録事項の入力を、受領後速やかに、又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後速やかに行うこととする。第2号は、200ドット以上・256階調以上で読み取るスキャナ、タイムスタンプ、訂正削除の履歴の確認(又は訂正削除ができないこと)を挙げる | 保存の本体は画像。解像度と階調は読み取る機器の要件で、文字が取り出せたかどうかを基準にした書き方ではない | 文字の読み取りの完了を、入力の完了の条件とする記述 |
| 検索の記録項目 | 第5号は、日付・金額・取引先を検索の条件に設定できること、日付と金額は範囲指定、二以上の項目の組み合わせを求める。通達4-30は、書類の区分ごとに記録項目を例示し、通達4-12は、ファイル名や索引簿でも検索できる状態として取り扱う。問41は、画像をテキスト化できない場合でも「手入力するなどして」設定できるようにする必要があるとする | 三項目の値を用意する手段の一つとして位置づけを考えられる(問41の文言からの読み方) | AI-OCRを手段として名指しで認める、又は認めない記述。読み取り結果を誰がいつ確かめるか |
| 訂正・削除の履歴 | 第2号ハは、記録事項の訂正又は削除の事実及び内容を確認できる、又は訂正削除ができないシステムを求める。通達4-23から4-25は、「訂正又は削除」の対象と、履歴の確保の方法を定める。問33から問35は、スキャナで読み取った電子データ、画像データについて、版の管理や変更できないシステムを説明する | 通達は対象を「保存されている電磁的記録」「書面の情報」で定める。読み取り結果の修正がここに含まれるかは、書かれていない | 読み取り結果(検索の条件に使う値を含む)の修正が、履歴の対象になるか |
| 帳簿との関連性 | 第3号は、電磁的記録の記録事項と関連する国税関係帳簿の記録事項との間で、相互に関連性を確認できるようにしておくことを求める。通達4-27は、重要書類と帳簿の双方に伝票番号などを付し、番号で双方を確認できる方法を例示する | 読み取った項目の仕訳への引き継ぎは、通達の例示には出てこない。確認の手段になるかは事務所側の読み方 | 引き継ぎの自動化だけで、この要件を満たすか |
画像:入力期間の中で求められているのは、読み取りの完了ではない
施行規則第2条第6項第1号は、記録事項の入力を、書類の作成又は受領後、速やかに行うこと、又は、業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(作成又は受領から入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る)のどちらかとしています。一問一答の問21は、この入力期間内に、単にスキャニング作業を終えていればよいのではなく、タイムスタンプが付された状態、又は訂正や削除の履歴等を確認できるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む)に格納した状態にしなければならない、と答えています。
つまり、入力期間の中で問われているのは、画像が改ざんされにくい形で保存された状態になっているかです。読んだ範囲の第6項第1号・第2号と問21には、文字の読み取りが終わったことを入力の完了の条件とする記述はありません。
事務所の運用に置き換えると、読み取り結果の確認が終わるまで画像を保存しない運用にすれば、入力期間の管理が、確認の遅れに左右されます。画像を保存した日と、読み取り結果を確認した日を別々に記録するかは、事務所が決めておく項目です。
読み取りの数値の要件も、同じ向きに書かれています。解像度は25.4ミリメートル当たり200ドット以上、階調は赤・緑・青のそれぞれ256階調以上で読み取るスキャナであること、と、機器の側に定められています。AI-OCRで文字が取り出せたかどうかを基準にした書き方ではありません。なお、読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報を保存する要件は、令和6年1月1日以後に保存を行う書類から廃止された、と一問一答は書いています(問1)。
検索項目:条文が求めるのは「設定できること」。書類ごとの項目は通達が例示する
第5号は、検索機能について、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索の条件として設定できること(イ)、日付又は金額は範囲を指定して条件を設定できること(ロ)、二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること(ハ)を求めています。ただし、国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合は、ロとハは除かれます。問45は、この場合でもイは満たす必要がある、と書いています。
「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先」が何を指すかは、取扱通達4-30が、書類の区分ごとに例示しています。問41と問42は、この通達4-30を参照しています。
- 領収書は、領収年月日、領収金額、取引先名称。
- 請求書は、請求年月日、請求金額、取引先名称。
- 納品書は、納品年月日、取引先名称。金額は、この例示には挙がっていません。
- 注文書は、注文年月日、注文金額、取引先名称。見積書は、見積年月日、見積金額、取引先名称。
検索のしかたについて、通達4-12は、システム上の検索機能のほか、ファイル名に規則性を持たせて記録項目を入力する方法や、別に索引簿等を作って検索できる状態にする方法でも、要件を満たすものとして取り扱う、としています。通達4-9は、検索機能に、検索項目について記録事項がない電磁的記録を検索できる機能を含む、と書いています。
問41は、画像データをテキスト化できない場合でも、日付・金額・取引先を検索の条件として設定できなければならないのか、を問い、テキスト化して保存できる機能などが備わっていない場合であっても、これらを「手入力するなどして」検索の条件として設定できるようにする必要がある、と答えています。取引先ごとにフォルダを分けて保存し、日付と金額を手入力するなどして管理している場合に、フォルダの中で日付と金額について検索の条件を設定できるときは、検索機能の要件を満たす、とも書いています。
読み方の一例を書きます。第5号の要件は「設定することができること」という状態に向けられていて、記録項目の値をどう用意するかは、条文には書かれていません。問41が用意の仕方として挙げるのは「手入力するなど」で、通達4-12が挙げるのはファイル名や索引簿です。AI-OCRを名指しで認める、あるいは認めない記述は、読んだ範囲にありません。AI-OCRで取り出した文字は、この三項目を用意する手段の一つとして位置づく、と読めます。ただし、読み取り結果が正しいかどうかを、誰がいつ確かめるかは、条文にも通達にも問41にも書かれていません。
記録項目の選び方に関わる記述が、問42から問44にあります。
- 問42:一か月分の取引がまとめて記載された納品書では、個々の取引ごとの日付と金額を使う方法のほか、書類を授受した時点の発行又は受領の年月日と、書類に記載された取引金額の合計額を使う方法でもよい。どちらも、各課税期間で自社が一貫した規則性を持っていれば差し支えない。日付を個々の取引日にするなら金額も個々の金額で、日付を発行又は受領の年月日にするなら金額も合計額で、検索できるようにしておく必要がある。
- 問43:取引金額は、帳簿の処理方法(税抜経理か税込経理か)に合わせるべきと考えられるが、受領した書類に記載されている取引金額を記録項目としても差し支えない。
- 問44:記載すべき金額がない書類は、取引金額を空欄又は0円としてよい。ただし、空欄とする場合も、空欄であることを対象として検索できるようにしておく必要がある。
AI-OCRを使う場合、どの日付を拾い、どの金額を拾うかという読み取りの設定は、通達4-30の書類区分ごとの例示と、問42で言う「一貫した規則性」の側の話として確認することになります。また、問44が空欄を認めているのは、記載すべき金額がない書類についてです。読み取れなかったために空欄になったものの扱いは、通達4-9が検索の対象に含める「記録事項がない電磁的記録」との関係を含めて、読んだ範囲に書かれていません。読み取れなかった空欄と、書類に記載のない空欄を区別して記録するかは、事務所が決める項目です。
読み取り結果を直したとき:通達が定める「訂正又は削除」の範囲と、書かれていない点
施行規則第2条第6項第2号ハは、記録事項について、訂正又は削除を行った場合にこれらの事実及び内容を確認できること、又は、訂正又は削除を行うことができないこと、のいずれかを満たすシステムを使うことを求めています。
この「訂正又は削除」が何を指すかは、取扱通達が三つの番号で定めています。
- 4-23:「訂正又は削除を行った場合」とは、既に保存されている電磁的記録を訂正又は削除した場合をいう。例として、受領した書類の書面の記載事項を訂正するために、相手方から新たに書類を受領してスキャナで読み取った場合は、新たな電磁的記録として保存する。
- 4-24:「訂正又は削除を行った場合」とは、スキャナで読み取った書類の書面の情報の訂正又は削除を行った場合をいう。ただし、書面の情報(書面の訂正の痕や修正液の痕等を含む)を損なうことのない画像の情報の訂正は含まれない。
- 4-25:訂正した場合は、上書き保存されず、訂正した後の電磁的記録が新たに保存されること、削除しようとした場合は、電磁的記録は削除されず、削除したという情報が新たに保存されること、をいう。スキャナで読み取った最初のデータと保存されている最新のデータが異なっている場合は、訂正又は削除の履歴と内容の全てを確認できる必要がある。
一問一答の問33は、スキャナ保存の要件である版の管理(ヴァージョン管理)として、次の四つを全て満たす必要があるとしています。スキャナで読み取った電子データを必ず初版として保存すること。更新処理ができるのは最新の版だけであること。削除は物理的に行わず、全ての版と、訂正した場合は訂正前の内容が確認できること。削除されたデータも検索できること。問34は、通達4-24と4-25の例示を図で示しています。問35は、訂正削除を行うことができないシステムの条件として、画像データを全く変更できず、保存されているデータが読み取り直後のデータであることを証明できること、を挙げています。問30は、スキャンミスで読み取りをし直した場合の扱いの条件の一つに、読み取りし直した電磁的記録の訂正削除履歴に基づいて保存していること、を挙げています。
これらは、問33が「スキャナで読み取った電子データ」、問35が「画像データ」と書き、通達が「保存されている電磁的記録」「書面の情報」「画像の情報」と書くとおり、読み取った電磁的記録そのものを対象にしています。通達にも、「OCR」「テキスト」の語は出てきません。AI-OCRの読み取り結果を直したとき、その直しが、ここでいう「記録事項の訂正」に当たるのかは、条文にも通達にも一問一答にも書かれていません。通達の定義を踏まえると、読み取り結果の位置づけ次第で、第2号ハの側にも関わりうる、というのがこの記事の読み方です。
架空の例です。確認者が、読み取り結果の取引先名「サンプル商事」の末尾の読み誤りを直したとします。画像は変わっていません。この直しは、(a)保存した電磁的記録の記録事項の訂正に当たり、直す前の値と直した事実を確認できる必要があるのか、(b)通達4-24が除く「書面の情報を損なうことのない画像の情報の訂正」に近い扱いなのか、(c)検索の条件に使う値の更新にとどまり、画像の履歴とは別の話なのか。(a)から(c)は、この記事での整理で、読んだ範囲に、どれかを示す記述はありません。問41が挙げる、フォルダ分けと手入力で管理する方法でも、手入力した値を直したときの扱いは書かれていません。
このため、次の二つは確認項目として挙げておきます。
- システムの提供者に、読み取り結果を修正したとき、修正前の値と修正した事実が残るか、その記録は画像の版の記録と別に残るかを尋ねる。
- 必要に応じて、所轄の税務署に、読み取り結果の修正の扱いを確認する。あわせて事務所の中でも、いつ誰が何をどう直したかを記録する。
帳簿との関連性:通達の例示と、読み取った項目を仕訳に引き継ぐこととの違い
第3号は、スキャナで記録した電磁的記録の記録事項と、その書類に関連する国税関係帳簿の記録事項(帳簿が電磁的記録で備え付け・保存されている場合は、その電磁的記録の記録事項)との間で、相互にその関連性を確認することができるようにしておくことを求めています。第7項は、国税庁長官が定める書類(一般書類)については、第6項の第1号と第3号の要件にかかわらず、事務の手続を明らかにした書類の備付けによって保存できるとしており、一問一答の問1は、令和5年度の改正で、この関連性を確認できるようにする書類が重要書類に限られた、と書いています。
条文の語は「相互にその関連性を確認することができる」で、方法は限定されていません。取扱通達4-27は、この確認の方法を例示しています。相互に関連する重要書類と帳簿の双方に、伝票番号、取引案件番号、工事番号などを付し、その番号を指定することで、重要書類と帳簿のどちらの記録事項も確認できるようにする方法などによって、原則として全ての重要書類について確認できることをいう、という書き方です。関連性を確保する番号が帳簿に記載されていなくても、他の書類を確認すること等でその番号が確認でき、関連する重要書類も確認できる場合は、確認できるものとして扱う、とも書いています。また、帳簿と関連性を持たない重要書類についても、関連性を持たない書類であると確認できる必要がある、と注記しています。通達4-28は、書類の種類ごとに、関連する帳簿の例(領収書なら経費帳、現金出納帳など)を挙げています。
通達の例示に出てくるのは、書類と帳簿の双方に付した番号です。読み取った項目を会計ソフトの仕訳に引き継ぐ運用は、通達の例示には出てきません。そのため、引き継ぎの運用がこの確認の手段になるかは、原文からは決まらず、事務所側の読み方の一例にとどまります。読み取り結果が仕訳に入っていることと、画像と仕訳のどちらからでも、もう一方をたどれることは、別のことです。「相互に」とあるので、画像から仕訳、仕訳から画像の両方向を確かめられるかを見ておく、というのが読み方の一例です。通達4-30の注は、一連番号等を帳簿書類に記録して第3号の要件を確保している場合は、その番号で帳簿の記録事項と書類を検索できる機能が必要になる、と書いています。メールなど電子データで届く資料の側は、別の制度(電子取引)の話になるため、こちらの記事に分けています。
問21の(注)は、帳簿との相互関連性(重要書類と過去分重要書類に限る)と検索機能の確保は、電磁的記録の「入力」に含まれないため、原則として電磁的記録を保存するまでに確保しなければならない、と書いています。国税関係書類の保存の時点で帳簿が作成されていない場合は、決算終了後遅滞なくこれらの要件を満たしていれば認められる、とも書いています。
保存義務者:事務所が預かって読み取るとき、条文が語らないこと
電子帳簿保存法の第2条第4号は、保存義務者を、国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされている者、と定めています。第4条第3項の主語も、施行規則第2条第6項の「次に掲げる要件に従って当該電磁的記録の保存をしなければならない」の主語も、この保存義務者です。一問一答の問57は、保存義務者・保存場所・納税者・納税地の関係を類型で示し、保存義務者が国税の納税者である場合と、そうでない場合を並べています。
読んだ範囲で、条文にも、一問一答の問1から問69の見出しにも、税理士事務所が顧問先の紙を預かって読み取る場合を扱う記述はありません。取扱通達も、「税理士」の語は出てきません。通達2-3は、保存義務者が国税の納税者でない場合の例として、金融機関の営業所等の長と酒類の販売業者を挙げています。
通達4-3には、近い記述があります。法第4条第1項・第2項(と第5条)の「自己が」作成するとは、保存義務者が主体となってその責任において行うことをいい、国税関係帳簿書類に係る電子計算機処理を会計事務所や記帳代行業者に委託している場合も、これに含まれる、というものです。ただし、これは帳簿書類を電子計算機で作成する場合の第1項・第2項(と第5条)についての通達で、紙の書類を読み取って保存する第3項の場面を述べたものではありません。事務所が読み取りを担う場合に、同じ考え方を当てはめてよいかは、書かれていません。
施行規則の第2条第2項第1号には、電子計算機処理を他の者に委託している場合の備付け書類(委託に係る契約書など)の定めがあり、第6項第6号が、この規定を書類の電磁的記録の保存に準用しています。顧問先と事務所の関係が、ここでいう委託に当たるのか。保存する電磁的記録を、誰の保存として扱うのか。これは条文からも通達からも決められません。事務所が顧問先との分担を書面で整理したうえで、所轄の税務署とシステムの提供者に確認する事項です。
条文の外で、事務所が先に決めておく項目
以下は、条文が決めていないために、事務所の側で先に決めておきたい項目の例です。条文の要件そのものではなく、一般的な進め方の提案です。
- 紙を受け取った日、画像として保存した日、読み取り結果を確認した日を、別々に記録するか。
- 検索の記録項目として、どの日付、どの金額、どの取引先名を使うかを、書類の種類ごとに決めたか(通達4-30、問42・問43)。
- 読み取れなかった項目と、書類に記載のない項目を、区別して記録するか。
- 読み取り結果を修正した人・日・内容を、事務所の側でも記録するか。システムで修正前の値が残るかを、提供者に確認したか。
- 画像と帳簿の記録を、どちらからでもたどれるか。そのために、番号などの何を使うか(通達4-27の例示を参考にする場合)。
- 顧問先の紙の画像を、誰の保存として扱うか。顧問先との役割分担を、書面にしたか。
- 税務職員から電磁的記録の提示又は提出の求めがあったとき、誰が、どのシステムから出すか。
解説ページ6件と、通達・一問一答で、どこまで確かめたか
2026年10月15日に、スキャナ保存と電子帳簿保存法への対応を扱う解説ページ6件の本文を取得して読みました。確認した範囲では、スキャナ保存の要件を一覧にして解説するもの、AI-OCRを検索項目の自動入力や入力作業を減らす手段として紹介するもの、AI-OCRの読み取り結果は人が確認・修正する運用を設計するよう勧めるもの、取引先名称は画像上で確認できるだけでは足りずシステム上にテキストデータで入力しておく必要があると書くもの、スキャンした書類を仕訳や補助記録と結びつけて保存する仕組みがあれば帳簿との関連性は足りると書くもの、ファイル名の規則性や索引簿で検索できるようにする方法を挙げるもの、税理士が顧問先に提供する支援の内容を整理するものがありました。
一方、確認した6件の本文では、AI-OCRの読み取り結果を、施行規則第2条第6項の各号(入力、検索、訂正削除の履歴、帳簿との関連性)のどこに当たるかに分けて読む記述や、読み取り結果の修正が訂正削除の履歴の対象になるかを、条文と通達から断定できない事項として書く記述は、確認できませんでした。取扱通達の語が出るのは1件で、タイムスタンプの説明を通達に委ねる文でした。取扱通達の4-23から4-25、4-27、4-30の内容を書いたものは、確認できませんでした。これは確認した6件の範囲の話で、ほかの解説や資料に同様の記述がないとは言いません。また、確認した1件の要件表には「大きさ情報の保存」の項目が「必要」として載っていましたが、この項目は、国税庁の一問一答では、令和6年1月1日前に保存する書類の要件とされています(問10の注)。解説を読むときは、どの時期に保存する書類の要件かを確かめてください。
国税庁の別の一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)には、「OCR」の語が、全角表記(OCR)を含めて検索して1か所(問66)だけ出てきます。これは、電子取引データに関する別の特例(法第8条第5項、令和9年1月1日以後に施行)についての問で、スキャナ保存の問ではないため、この記事では要件の根拠として扱いません。問66の解説は、PDFからOCR等で読み取ってデータを抽出する方法では、抽出されたデータが取引内容を反映しているか確認・補正を行うことが前提になっている、と書いています。読み取り結果の確認・補正を前提とする書き方が、別の制度の問に1か所ある、ということです。
この記事で読んだ取扱通達は、4-3、4-9から4-12、4-23から4-28、4-30と、通達2-3です。それ以外の番号は、この記事の論点に使っていません。通達は、読んだ全体版が掲げる改正の最後が令和5年6月23日で、それ以降の改正の有無は、国税庁の最新の公表で確認してください。法令・通達・一問一答は改訂されることがあるため、実際に使うときは最新の版を確認してください。
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