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受け取った請求書のインボイス登録番号の確認は、事務所と顧問先のどちらが持つか|確認する時点・記録する項目・確認できなかったときの扱いを先に決める

AI(DX AX)

顧問先の受領請求書を記帳していると、登録番号(インボイス制度で適格請求書に記載される、「T」に続く13桁の番号)の確認が、いつのまにか「誰かが見ているはず」の作業になっていることがあります。顧問先は事務所が見ていると思い、事務所は顧問先が確認済みと思って記帳する。この状態で、番号が確認できない請求書が見つかると、誰が相手に聞くのか、記帳をどう進めるのかが、その都度の判断になります。

登録番号を公表サイトで検索する方法は、すでに多くの解説があります。この記事は、検索のやり方ではなく、事務所と顧問先のどちらが確認を持つか、どの時点で確認するか、確認の結果と「確認できなかった」という事実をどう記録するかを、税理士事務所の所長や業務責任者が決めるための整理です。次のものは扱いません。個別の請求書について仕入税額控除を受けられるかどうかの判断、経過措置の適用や割合の判断、照会ツールや会計ソフトの比較、確認にかかる時間の数値や効果の約束です。なお、当社は税理士事務所向けの税務AXを提供しているため、その立場は記事の最後に記載しています。

事務所の確認業務全体を相談前に棚卸しする視点は、記帳後の確認業務を棚卸しする5つの視点にまとめています。この記事は、そのうち「受領した請求書の登録番号」という一つの項目だけを掘り下げたものです。

まず結論:決めるのは「誰が・いつ・何を記録し・確認できないときはどうするか」の4点

ここでいう登録番号の確認とは、受領した請求書等に書かれた登録番号が、取引の時点で有効な番号かどうかを、国税庁の公表サイトなどで確かめ、その結果を残すことを指します。

決めること決まっていないと起きやすいこと
誰が(顧問先・職員・税理士の別)顧問先も事務所も「相手が見ているはず」と考え、誰も確認していない請求書が残る
いつ(受領時・記帳時・定期・決算前)確認の時点が人によって違い、請求書の日付と確認の日付の前後が、記録から分からなくなる
何を記録するか「確認した」とだけ残り、何を見て、いつ、どういう結果だったかが、後から分からない
確認できないときの扱い相手への問い合わせ、記帳の保留、税理士への回し方が、担当者ごとに違う

どの形にするかは、顧問先の経理の体制、証憑の受け取り方、顧問契約の範囲によって、事務所ごとに変わります。この表は、決まっていない点を見つけるためのもので、特定の形を勧めるものではありません。

「登録番号の確認」を、4つの作業に分けて考える

「登録番号の確認」と一言で呼ぶと、誰がどこまで持つのかを決められません。次の4つの作業に分けると、作業ごとに持ち主を決められます。

作業中身持ち主の候補
記載の確認受領した請求書に登録番号の記載があるか、「T」に続く13桁の形になっているか、転記の誤りがないか顧問先(受領時)/職員(記帳時)
有効性の照会公表サイトで番号を検索し、表示される名称、登録年月日、取消・失効の年月日を見る顧問先/職員
不一致・該当なしの問い合わせ該当がない、または請求書の記載と表示が違うとき、相手方に番号を確かめる取引先と直接やり取りする側(多くは顧問先)
台帳への反映と再照会確認結果を取引先ごとに残し、決めた時点で見直す職員(事務所の台帳)/顧問先(会計ソフトのマスタ)

この区切りは、公表サイトの性格から来ています。国税庁の公表サイトは、請求書等に記載された番号が、登録番号として取引時点で有効かどうかを確認するためのサイトで、検索は登録番号を基に行います。氏名や法人名では検索できません。そのため、番号が書かれていない請求書や、番号が分からない取引先は、公表サイトだけでは確認が始まらず、相手方への確認という別の作業になります。法人については、法人番号公表サイトで法人番号を調べ、「T」を付けて照会する方法を紹介する解説もありますが、この記事では検索の方法は扱いません。

公表サイトで該当がない場合や、請求書の記載と異なる情報が表示される場合について、国税庁のQ&A(問20)は、請求書等に記載された登録番号が誤っている可能性などがあるため、まず相手方に確認するよう案内しています。一方、屋号や省略した名称が書かれているために、表示される名称と請求書の名称が一致しない場合について、Q&A(問21-2)は、電話番号等により請求書を交付した事業者を特定できることを前提に、その登録番号の有効性が確認できれば、一義的には有効な適格請求書等として取り扱って差し支えない、としています。ただし、売手が適格請求書発行事業者以外の者であるにもかかわらず、自らの登録番号と誤認されるような英数字を記載しているような場合は、その請求書等は適格請求書等に該当しない、という注記も付いています。個別の請求書がどちらの場合に当たるかは、この記事では判断しません。

制度の前提:確認した条文と国税庁の案内に、確認の分担や頻度の定めは見当たらなかった

分担を決める前に、制度が何を求めているかを、一次情報で確かめました。確認したのは、消費税法の条文(e-Gov法令検索のAPIで取得)と、国税庁のQ&A、公表サイトのFAQ、国税庁の「インボイス制度って?」のページです。

  • 仕入税額控除は、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、適用しないとされています(消費税法第30条第7項。請求書等の交付を受けることが困難である場合などの政令で定める場合は帳簿の保存、災害その他やむを得ない事情で保存できなかったことを証明した場合は、この限りでないとする但書があります)。
  • ここでいう請求書等には、適格請求書発行事業者が交付する適格請求書又は適格簡易請求書が含まれます(同条第9項第1号)。適格請求書の記載事項には、発行事業者の氏名又は名称及び登録番号が挙げられています(第57条の4第1項第1号)。
  • 帳簿の記載事項として第30条第8項第1号に列挙されているのは、課税仕入れの相手方の氏名又は名称、年月日、資産又は役務の内容、支払対価の額です。登録番号の確認結果は、この列挙に含まれていません。
  • 適格請求書発行事業者の登録は、取消しや届出によって効力を失うことがあり(第57条の2第6項・第10項)、取り消された又は効力を失った旨とその年月日は公表されます(同条第11項)。

2026年10月9日に確認した範囲では、第30条第7項から第9項、第57条の2、第57条の4の本文に、買手が登録番号を確認する手順、確認の頻度、確認結果の記録の方法を定めた文言は見当たりませんでした。施行令、通達、国税庁のそのほかのQ&Aまでは網羅的に確認していません。「定めがない」と言い切るものではなく、確認の分担・頻度・記録の形は、事務所と顧問先が運用として決める部分が大きい、という整理です。

国税庁の「インボイス制度って?」のページには、次の趣旨の記載があります。簡易課税制度や2割特例・3割特例を適用する場合は、受け取ったインボイスを保存しなくても仕入税額控除を受けられること(ただし所得税等の観点からは、請求書などの書類の保存は引き続き必要)。また、令和13年(2031年)9月末までは、インボイスの保存がなくても仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置があること。この記事は、特例や経過措置の適用の可否も、控除の割合も判断しません。顧問先ごとの消費税の計算方法の区分は、受領請求書の確認の位置づけに関わり得るため、事務所が把握していることを分担の前提にしてください。個別の適用は、国税庁の最新の案内、所管、専門家に確認してください。

分担を決める:3つの担い手と、3つの型

ここでの担い手は、顧問先(請求書を受け取り、取引先と直接やり取りする人)、事務所の職員(記帳し、確認する人)、税理士・所長(最終の判断をする人)の3者です。次の3つの型は、分担の例であり、事務所の契約の範囲や顧問先の体制に合わせて組み替えます。

型分担の例向いている場合注意点
A:顧問先が確認し、事務所は記録の有無を見る受領時の記載確認、有効性の照会、台帳(会計ソフトのマスタ)への反映は顧問先。事務所は記帳時に、確認の記録があるかを見る顧問先に経理担当者がいて、自分で会計ソフトに入力している顧問先の確認の質が事務所から見えない。記録の項目を決めて共有しないと、「確認した」と言われても中身が分からない
B:事務所が記帳時にまとめて確認し、顧問先は問い合わせに答える記載確認と有効性の照会は職員が記帳時に行い、不一致や該当なしは顧問先経由で相手方に確認する紙や写真の証憑を事務所が受け取り、事務所が入力している事務所の作業が増える。どこまでを事務所が引き受けるかは、契約や業務範囲との整合を別に確認する
C:受領時の記載確認は顧問先、有効性の照会と台帳は事務所顧問先は番号の記載がない請求書に印を付けて渡す。職員が照会し、台帳に残す。例外の扱いは税理士・所長が決める顧問先に担当者はいるが、公表サイトの照会までは任せにくい受け渡しの形が揃わないと、二重に確認するか、誰も確認しない請求書が出る

どの型でも共通する点が一つあります。確認できなかった請求書の記帳上の扱い(そのまま計上するか、保留するか、どの区分で処理するか)は、職員や顧問先の判断に任せず、税理士・所長が判断する前提にしておくことです。判断そのものはこの記事では扱いません。

型を選ぶために、次の問いを事務所で確かめます。

  • 顧問先に、請求書の確認を担当できる人がいるか
  • 証憑は、誰が、どの形(紙、写真、PDF、会計ソフトへの取り込み)で渡しているか
  • 取引先と直接やり取りするのは、誰か
  • 顧問先の消費税の計算方法の区分を、事務所は把握しているか

確認する時点を決める:新規・記帳時・定期・決算前

確認の時点は、4つに分けると決めやすくなります。

時点確認すること考え方持ち主の例
新規の取引先から初めて請求書を受け取ったとき記載、有効性、名称の照会。確認結果を台帳に登録する最初に確認して台帳に残しておけば、次回以降は台帳と照らす運用にできる型に応じて顧問先または職員
記帳(取り込み)の時請求書の番号が台帳の番号と一致するか。台帳にない番号は照会する台帳との照合に絞る運用もある。定期の再照会の周期を決めない場合は、台帳の確認日が古いままになる職員
定期(月次・年に数回・年1回など、事務所で決める)台帳の番号を再照会し、取消・失効の年月日がないかを見る登録は取消しや失効があり得て、その年月日は公表される(消費税法第57条の2)ため、一度確認した番号も変わり得る職員または顧問先
決算・申告の前「未確認」「問い合わせ中」の一覧を消し込み、残るものを税理士・所長へ回す締めの直前に未確認が見つかっても、回す先と時間が足りなくなる職員→税理士・所長

頻度の書き方は、解説ごとに分かれています。受領の都度とするもの、新規の取引時と年1回程度とするものなどがあります。確認した条文に頻度の定めは見当たらなかったため、この記事は特定の頻度を勧めません。取引先の数、金額、取引の継続性を踏まえて、事務所と顧問先で決めてください。

記録する項目:「確認した」だけで終わらせない

確認の結果は、後から別の人が見て分かる形で残します。記録の形(事務所の台帳、会計ソフトの備考、確認ログのいずれか)は問いません。事務所と顧問先が同じ場所を見られることが条件です。

項目内容残す目的
請求書の識別取引先名(請求書の記載のまま)、請求書の日付、金額どの請求書についての確認かを特定する
登録番号請求書に書かれていた番号(記載のまま)転記の誤りを後から見つけられるようにする
公表サイトの表示表示された名称、登録年月日、取消・失効の年月日の有無請求書の記載との違いを比べられるようにする
確認日と確認した人いつ、顧問先と職員のどちらが確認したか確認の時点と持ち主を後から追えるようにする
結果の区分下の表の区分のどれか集計と、次の対応への引き継ぎに使う
問い合わせの記録連絡した日、相手、回答の要点「聞いたかどうか」を、担当者の記憶に頼らない
記帳上の扱いを判断した人と日税理士・所長が判断した日と、その内容判断の根拠と時点を残す

先に見たとおり、登録番号の確認結果は、消費税法第30条第8項第1号が列挙する帳簿の記載事項には含まれていません。国税庁のQ&A(問109)も、保存が必要な帳簿の記載事項を、課税仕入れの相手方の氏名又は名称、年月日、資産又は役務の内容、支払対価の額とし、相手方の登録番号の記載は不要としています。したがって、確認した範囲では、この記録の項目を法令が指定している記載は見当たりません。施行令・附則・通達までは確認していないため、法令上の要否は断定せず、記録の形は事務所と顧問先が運用として決める部分が大きい、という整理です。確認画面の保存まで行うかどうかも、運用で決める事項で、この記事では義務の有無を断定しません。

架空の記録例を示します。

取引先(請求書の記載)請求書の日付・金額番号(請求書の記載)公表サイトの表示確認日・確認者結果の区分備考
A商店(架空)○月○日・○○円T0000000000001(架空)名称が一致、取消・失効の表示なし○月○日・職員確認済み
B工業(架空)○月○日・○○円T0000000000002(架空)該当なし○月○日・職員該当なし(問い合わせ中)顧問先経由で相手方へ確認、○月○日に連絡
C企画(架空)○月○日・○○円記載なし(照会できない)○月○日・職員番号の記載なし税理士・所長へ。記帳は保留

この例の取引先、番号、日付は架空で、記録の列の並べ方を示すだけのものです。実際の記録は、事務所と顧問先が決めた項目に合わせて作ります。

結果の区分と、確認できなかったときの扱い

結果を区分で記録しておくと、確認できなかった請求書が一覧で見えます。区分の例と、まずやることを示します。

区分起きていることまずやること記録に残すこと
確認済み公表サイトで番号を確認でき、確認日の時点で取消・失効の表示がない台帳に登録し、次の再照会の時点を決める確認日、確認者、表示された名称
番号の記載なし請求書等に登録番号の記載が見当たらない税理士・所長へ回す。発行者への確認や再発行の依頼をするかは、事務所の方針で決める記載がなかった事実、回した日
該当なし公表サイトで該当する情報がない桁や文字の転記ミスを確認する。なお該当がなければ、相手方に番号を確かめる(国税庁Q&A問20)連絡した日、相手、回答の要点
名称が一致しない番号は確認できるが、表示される名称が請求書の名称と違う屋号や省略した名称の可能性を確かめ、請求書の発行者を電話番号等で特定できるかを見る。特定できない、または登録番号と誤認される記載が疑われるときは、税理士・所長へ回す(国税庁Q&A問21-2)。相手方に聞くかは方針で決める表示された名称と請求書の名称、発行者を特定できたか、判断した人
取消・失効の表示がある公表サイトに取消・失効の年月日が表示される請求書の日付と、取消・失効の年月日を並べて記録し、税理士・所長へ回す両方の日付、回した日
未確認締めの時点までに確認できていない「未確認」として一覧に残し、いつまでに誰が確認するかを決める理由、再確認の担当と時点

この表の「まずやること」は、運用の例です。確認できなかった請求書の記帳上の扱い、仕入税額控除の可否、経過措置の区分は、税理士・所長が判断する前提で、この記事では個別の結論を示しません。所属の税理士会や専門家に確認してください。

先に分担を決めるのが向いている場合、向いていない場合

分担と記録の整理から始めるのが向いているのは、次のような場合です。

  • 番号の記載のない請求書や、公表サイトで該当しない請求書が、繰り返し見つかる
  • 誰が相手方に聞いたのか、後から分からなくなることがある
  • 担当者が替わると、確認のやり方が変わる
  • 「顧問先が確認しているはず」「事務所が見ているはず」というやり取りが、実際にある

向いていないのは、次のような場合です。

  • 顧問契約の範囲や報酬の見直しが、論点の中心になっている(分担の設計とは別の判断で、この記事では扱いません)
  • 個別の請求書について、仕入税額控除の可否や経過措置の区分を知りたい(税理士や所管に確認してください)

失敗パターン

  • 顧問先と事務所のどちらも「相手が確認している」と考え、未確認の請求書が残る
  • 「確認済み」とだけ記録し、確認日と結果が分からない
  • 番号の形が合っていることと、公表サイトで確認できることを、同じ扱いにする
  • 一度確認した番号を、取消・失効の可能性を見直さないまま使い続ける
  • 確認できなかった請求書の記帳上の扱いを、担当者ごとの判断で変えている
  • 台帳を作ったきり、担当者の交代や顧問先の変更に合わせて更新しない

事務所の中で決めておくこと

決めること例
台帳の持ち主事務所に1つか、顧問先ごとか。誰が更新するか
確認の時点と、再照会の周期新規・記帳時・定期・決算前のうち、どれを誰が持つか
回す先確認できなかった請求書を、誰に、どの形で回すか
顧問先への案内顧問先に担当してもらう作業と、その記録の渡し方
契約や業務範囲との整合確認を事務所が引き受ける範囲(個別の取扱いは所属の税理士会や専門家に確認)

当社の税務AXについて

当社の税務AXは、税理士事務所の記帳後の確認業務(請求書や受領請求書と、それぞれの入金・支払の記録との突合)の前処理を、事務所ごとに設計・実装・運用する取り組みです。税務判断は、これまでどおり税理士が行います。

当社の公開ページでは、役割と責任として、事務所の職員は元資料の確認と顧問先への事実の照会を、税理士・所長は税務の最終判断を担う整理にしています。この記事の3者の分け方も、その考え方に沿っています。当社の公開ページには、登録番号を公表サイトで照会することや、受領した請求書が適格請求書に当たるかを判定することを、提供範囲として記載していません。この記事で扱った分担と記録の整理は、その前に事務所の中で決められる内容であり、税務AXの提供範囲を説明するものではありません。銀行明細を元データとする照合は、現時点では含みません。

具体的な内容は税務AX|記帳後の確認を、元データまで追える形に整えるに、誰に頼むかを先に決めたい方は税理士事務所のAI化、委託先の選び方にまとめています。

この記事で確認した一次情報

2026年10月9日に確認しました。法令や国税庁の案内は改訂されることがあります。実務に当たっては、国税庁の最新の案内を確認し、個別の判断は所属の税理士会や専門家に確認してください。

  • 消費税法(e-Gov法令検索):第30条第7項から第9項、第57条の2、第57条の4
  • 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」の問20・問21・問21-2(国税庁のPDF(公表等))と、帳簿の記載事項の問109(国税庁のPDF(全体版))
  • 国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトのご利用に関するよくある質問と、トップページの案内(公表サイト)
  • 国税庁「インボイス制度って?」(国税庁のページ)

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