AIが下書きした内定者への労働条件の文面と、募集時に示した条件の差分は、職業安定法と労働基準法のどの項目で誰が照らすのか

目次
内定者に送る労働条件の文面を、AIに下書きさせる場面を考えます。AIには、募集のときの求人票や募集要項を渡しているかもしれませんし、自社のひな形だけを渡しているかもしれません。出てきた文面が整っていても、求人票に書いた「就業の場所」や「試用期間」といった言葉と、どこかが食い違っている可能性は残ります。その食い違いは、募集のときに何を示したかの記録と、内定時の文面を、同じ項目名で並べないと見つかりません。並べて見つけた差を誰が認めるのか、誰が本人に伝えるのかは、AIの出力からは決まりません。
この記事は、募集のときの明示を定める職業安定法と、労働契約の締結に際しての明示を定める労働基準法を、条文の言葉で分けて読み、そのうえで項目ごとに照らす表と、AIと人の分担を示します。ここでいう「照合表」とは、募集時に示した内容の記録と内定時の文面を、同じ項目名で並べ、差と、差があるときに決める人を書き込む一覧のことです。表は、表計算ソフトなどに写して使える形にしています。ファイルの配布物は用意していません。ここに書く進め方は、一般的な進め方の提案であり、特定の会社で試した結果ではありません。
この記事は、条件を変えてよいか(不利益変更が認められるか)、募集時と違う条件で結んだ契約の効力、裁判例、内定通知が法的にどの段階にあたるか、個別の文面が適法かどうかを判断しません。これらは、社会保険労務士、弁護士、所管の労働局に確認してください。
条文は、e-Govの法令データで2026年10月21日に取得し、その時点の現行の版を読みました。取得した版の一覧は、記事の最後に載せています。
先に、読み取れたことを四つ挙げます。
- 募集のときの明示は、職業安定法第5条の3第1項が定めます。募集に応じた人と労働契約を結ぼうとするときに、第1項で明示した内容を変更する場合などに明示するのは、同条第3項です。契約の締結に際しての明示は、労働基準法第15条第1項が定める、別の条文です。
- 第3項の「その他厚生労働省令で定める場合」を、職業安定法施行規則第4条の2第1項は、明示した範囲内で内容を特定する場合、明示した内容を削除する場合、内容を追加する場合の三つで示しています。この場合に明示するのは、特定、削除、追加する内容です(同条第2項)。
- 募集時の明示事項(施行規則第4条の2第3項)と、労働契約の締結に際しての明示事項(労働基準法施行規則第5条第1項)では、項目の言葉が重ならない部分があります。「試みの使用期間」「保険の適用」「雇用主の氏名または名称」は後者の項目名に同じ語がなく、「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」「賃金の締切り及び支払の時期」「昇給」「休暇」は前者に同じ語がありません。
- 募集時に明示した内容に関する記録は、施行規則第4条の2第7項が、募集等が終了する日(その後に契約を締結しようとする人は、契約を締結する日)まで保存するよう定めています。内定時の文面を照らす相手は、この記録です。
条文は、募集のときと契約を結ぶときの明示を、別の条で書いている
二つの「明示」を、条文の言葉のまま並べます。下の表は、結論を出すものではなく、どちらの条の言葉で文面を点検しているのかを取り違えないための整理です。
| 観点 | 職業安定法(第5条の3)と施行規則(第4条の2) | 労働基準法(第15条)と施行規則(第5条) |
|---|---|---|
| 条文が書く「いつ」 | 第1項は「募集に当たり」。第3項は、募集に応じて労働者になろうとする人と「労働契約を締結しようとする場合」で、第1項で明示した内容を変更する場合その他省令で定める場合 | 第15条第1項は「労働契約の締結に際し」 |
| 明示する人 | 第1項は職業紹介事業者、労働者の募集を行う者など。第3項は求人者、労働者の募集を行う者など | 使用者 |
| 明示する相手 | 募集に応じて労働者になろうとする人(第1項)、労働契約の相手方となろうとする人(第3項) | 労働者 |
| 明示する内容 | 従事すべき業務の内容と、賃金、労働時間その他の労働条件(第1項)。第3項は、変更する内容など。施行規則第4条の2第2項は、特定する内容、削除する内容、追加する内容 | 賃金、労働時間その他の労働条件(第15条第1項) |
| 内容が募集時と違うときの定め | 第3項と施行規則第4条の2第1項、第2項。変更する場合と、特定、削除、追加の場合に、その内容を明示する | 第15条第2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合に、労働者が即時に労働契約を解除できるとする。施行規則第5条第2項は、明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならないとする。変更を明示する定めは、読んだ条文(第15条と施行規則第5条)には見当たらなかった |
| 方法 | 賃金と労働時間に関する事項その他省令で定める事項は、省令で定める方法による(第4項)。施行規則第4条の2第4項は、書面の交付。書面を受け取る人が希望した場合は、ファクシミリ、または電子メール等(受信した人が記録を出力して書面を作成できるものに限る)。職業紹介を緊急に行う場合のただし書もある | 第15条第1項後段は、賃金と労働時間に関する事項その他省令で定める事項は、省令で定める方法による。施行規則第5条第4項は、書面の交付。労働者が希望した場合は、ファクシミリ、または電子メール等(出力して書面を作成できるものに限る) |
| 記録の保存 | 施行規則第4条の2第7項。第1項で明示された内容に関する記録 | 第15条と施行規則第5条には、保存を定める語は見当たらなかった |
表から読み取れることは、二つあります。一つは、同じ「労働条件の明示」でも、条文の主語、時点、内容を指す言葉、内容が違うときの定めが、二つの条で別に書かれていることです。もう一つは、内定者に出す文面を、どちらの条の言葉で点検するか(または両方で点検するか)を、この記事は決めないことです。二つの条の言葉を並べて、取り違えないようにするための整理です。どの時点が条文のいう「労働契約を締結しようとする場合」や「労働契約の締結に際し」に当たるのかも、この記事は判断しません。
募集時の明示事項には、令和6年4月1日に、施行規則の改正で三つが加わりました。業務の内容の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限の定めがあれば、それを含む)です。2026年10月21日に、e-Gov法令API(v2)で、令和5年10月23日施行の版と令和6年4月1日施行の版の第4条の2第3項を比べ、この三つが加わったことを確認しました。ハローワークの案内(東京労働局のハローワーク青梅のページ、愛知労働局のハローワーク瀬戸のページ)は、「変更の範囲」を、雇入れ直後だけでなく、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中での変更の範囲と説明しています。この説明は条文ではなく、各ページの記載です。
明示事項の言葉は、二つの規則で重なる部分とずれる部分がある
照合表の縦軸にする項目を決めるために、二つの規則の項目を並べます。左は、法第5条の3第4項の省令で定める事項として施行規則第4条の2第3項が挙げるもので、方法まで定められている事項です。右は、法第15条第1項前段の労働条件として、労働基準法施行規則第5条第1項が挙げるものです。「項目名に同じ語なし」は、その事項を明示しなくてよいという意味ではありません。条文の項目名に、同じ言葉が見当たらないという意味です。
| 項目 | 職業安定法施行規則 第4条の2第3項 | 労働基準法施行規則 第5条第1項 |
|---|---|---|
| 業務の内容 | 一 従事すべき業務の内容に関する事項(業務の内容の変更の範囲を含む) | 一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(変更の範囲を含む) |
| 契約期間 | 二 労働契約の期間に関する事項 | 一 労働契約の期間に関する事項 |
| 試みの使用期間 | 二の二 試みの使用期間に関する事項。第6項は、試みの使用期間中とその後で内容が異なる場合は、それぞれの内容を示すこととする | 項目名に同じ語なし |
| 有期労働契約の更新の基準 | 二の三 更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または更新回数の上限の定めがあれば含む)。期間の定めのある労働契約(期間の満了後に更新する場合があるものに限る)に係る募集の場合に限る | 一の二 更新する場合の基準に関する事項(上限の定めがあれば含む)。有期労働契約で、期間の満了後に更新する場合があるものの締結の場合に限る |
| 就業の場所 | 三 就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む) | 一の三(業務の内容と同じ号) |
| 始業と終業の時刻、休憩、休日 | 四 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項 | 二 前者の事項に加えて、休暇、並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項 |
| 賃金 | 五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則第8条各号に掲げる賃金を除く)の額に関する事項 | 三 賃金(退職手当と第五号の賃金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項。五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与、第8条各号の賃金並びに最低賃金額に関する事項 |
| 社会保険・労働保険 | 六 健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険、雇用保険の適用に関する事項 | 項目名に同じ語なし |
| 雇用主 | 七 労働者を雇用しようとする者の氏名または名称に関する事項 | 項目名に同じ語なし |
| 派遣労働者として雇用する旨 | 八 労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨(雇用しようとする場合に限る) | 項目名に同じ語なし |
| 受動喫煙の防止措置 | 九 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項 | 項目名に同じ語なし |
| 退職 | 項目名に同じ語なし | 四 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
| 退職手当 | 項目名に同じ語なし | 四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、決定、計算及び支払の方法、支払の時期に関する事項 |
| そのほか | 項目名に同じ語なし | 六から十一 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他、安全及び衛生、職業訓練、災害補償及び業務外の傷病扶助、表彰及び制裁、休職に関する事項 |
労働基準法施行規則第5条第1項には、ただし書があります。「四の二」から「十一」までの事項は、使用者がそれらに関する定めをしない場合は、明示の対象から除かれます。「一の二」は、有期労働契約で期間の満了後に更新する場合があるものの締結の場合に限られます。書面での明示が必要な事項の範囲は、同規則第5条第3項が別に定めています(第1項第一号から第四号までの事項。昇給に関する事項を除く)。職業安定法側の方法は、施行規則第4条の2第4項が、第3項の各号の事項について定めています。
この表から、照合表の作り方に関わる点が三つ出てきます。
- 賃金は、募集時の列が「額」、契約締結時の列が「決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期、昇給」と、言葉が違います。求人票に月額を書いていても、内定時の文面に出てくる賃金の項目は、求人票の記載とは別の言葉で並びます。
- 退職、休暇、昇給は、募集時の明示事項の列に、項目としての同じ語がありません。賞与は、募集時の列では賃金の額から除かれています。内定時の文面にこれらが書かれていて、募集時の記録に対応する語が見つからない場合、照らす相手がありません。照合表では「記録にない」と書いて、人に上げます。
- 労働基準法施行規則第5条には、無期転換申込みに関する事項を明示する第5項、第6項もあります。この記事の表には入れていません。
照合表:募集時の版、内定時の文面、差、決める人
縦軸には、施行規則第4条の2第3項の項目を置きます。募集のときに示した可能性のある項目だからです。横には、募集時の版の記載、内定時の文面の記載、差の区分、差があるときに決める人を置きます。次の表は、記入欄を空けた様式です。
| 項目 | 募集時の版の記載(媒体と版を添える) | 内定時の文面の記載(AIの下書きを含む) | 差の区分 | 差があるとき決める人 |
|---|---|---|---|---|
| 業務の内容(変更の範囲を含む) | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 契約期間 | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 試みの使用期間(期間中とその後で内容が違うときは、それぞれ) | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 更新の基準(有期労働契約のとき。上限があれば含む) | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 就業の場所(変更の範囲を含む) | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 始業と終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日 | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 賃金の額 | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 保険の適用 | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 雇用主の氏名または名称 | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 派遣労働者として雇用する旨(該当するときだけ) | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 受動喫煙を防止するための措置 | (記入) | (記入) | (記入) | (記入) |
もう一枚、募集時の項目の列に同じ語がない項目のための表を用意します。内定時の文面に書いてあるものを書き出し、募集時に何か示していたかを確かめます。募集時に示していなかった項目を、施行規則第4条の2第1項のいう「追加」として扱うかどうかは、この記事は判断せず、人が、必要なら専門家に確認して決めます。
| 内定時の文面にある項目 | 書いてある内容 | 募集時に示していたか(版を添える) | 示していなければ確認する人 |
|---|---|---|---|
| 退職に関する事項(解雇の事由を含む) | (記入) | (記入) | (記入) |
| 賃金の決定、計算及び支払の方法、締切りと支払の時期 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 昇給、賞与、休暇、退職手当 | (記入) | (記入) | (記入) |
| 臨時に支払われる賃金、最低賃金額、就業時転換 | (記入) | (記入) | (記入) |
| そのほか(負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰と制裁、休職) | (記入) | (記入) | (記入) |
差の区分は、条文の言葉と、自社の仮の区分に分けて書く
差の区分欄に書く言葉は、次の表のとおり、条文の語と自社の仮の区分を分けておきます。条文の語に当たるかどうかを、AIの一覧のまま確定させないためです。
| 区分 | 意味 | 言葉の出どころ | 決める人 |
|---|---|---|---|
| 一致 | 募集時の版と内定時の文面が同じ内容 | 自社の仮の区分 | 照合した人が書く |
| 変更 | 募集時に明示した内容と異なる内容になっている | 法第5条の3第3項の語 | 条件を決める権限のある人 |
| 特定 | 明示した範囲内で、内容を絞った | 施行規則第4条の2第1項第一号 | 条件を決める権限のある人 |
| 削除 | 明示した内容を載せなくなった | 同項第二号 | 条件を決める権限のある人 |
| 追加 | 募集時に示していない内容が加わった | 同項第三号 | 条件を決める権限のある人 |
| 文面にない | 募集時の版にあるが、内定時の文面に書かれていない | 自社の仮の区分 | 採用責任者が確認する |
| 記録にない | 内定時の文面にあるが、募集時の版が見つからず比べられない | 自社の仮の区分 | 採用責任者が確認する |
どれが「変更」で、どれが「特定」「削除」「追加」に当たるのか、判断が難しいものは、社会保険労務士や所管の労働局に確認します。区分を決めたあとに、差を認めるか、募集時の条件に文面を合わせるか、本人にどう伝えるかも、人が決めます。
架空の例
架空の例です。募集時の求人票に、業務は「営業」、就業の場所は「本社」、試用期間は「あり」と書かれていたとします。AIが下書きした内定時の文面には、業務が「営業または営業企画」、就業の場所が「本社または支社」と書かれ、試用期間の記載がありませんでした。照合表には、業務の内容は食い違い、就業の場所は食い違い、試みの使用期間は文面にない、と並びます。この三つが「変更」「特定」「削除」「追加」のどれに当たるのかは、AIの一覧では決まりません。照合した人が募集時の版に戻って記載を確かめ、条件を決める権限のある人が区分を決めます。文面を募集時の条件に直すのか、差を認めるのかも、その人が決めます。
AIに任せるのは「差し込み」と「一覧」まで、決めるのは人
照合表のどの作業をAIや決まった処理に任せ、どの作業を人が持つかを、次の表のように分けておくことを提案します。
| 作業 | AIや決まった処理 | 人 | 人は誰か |
|---|---|---|---|
| 募集時の記録から値を差し込む | 募集時の最終版の記載を、内定時の文面の該当欄へ写す。記録に項目がなければ、空欄のまま返す | 差し込む元が、募集時に実際に出した版かを確かめる | 募集の担当者 |
| 文面にない項目、食い違う項目を一覧にする | 照合表の二つの列を比べ、一致、食い違い、文面にない、記録にない、に仕分けて出す | 一覧を鵜呑みにせず、募集時の版の原本と見比べる | 下書きを依頼した人とは別の人 |
| 差の区分を決める | 変更、特定、削除、追加の候補を出すにとどめる | 区分を決める。難しいものは専門家へ | 採用責任者 |
| 差を認めるかを決める | しない | 募集時の条件を維持するか、差を認めるかを決める | 条件を決める権限のある人 |
| 本人へ連絡する | 連絡文の下書きまで | 内容を確認し、本人に連絡する | 連絡する担当者 |
| 条文の現行の版を確かめる | しない | ひな形を作るとき、直すときに、条文の現行の版を読む | 労務の担当者、社会保険労務士 |
下書きを依頼した人と、照合する人を分けるのは、自分が依頼した文面を自分で見ると、食い違いを読み飛ばしやすいためです。さらに、AIが差し込んだ値の元になった記録の位置(どの媒体の、どの版の、どの行か)を、出力に添えさせておくと、見比べる手間が減ります。人の確認が形だけにならないための点検は、AIの出力を人が確認している業務で、その確認が形骸化していないかは、どう点検するのかにまとめています。
募集時に出した版は、いつまで、どこに残すか
照合の相手になる「募集時の版」が残っていなければ、表の左の列は埋まりません。職業安定法施行規則第4条の2第7項は、求人者や労働者の募集を行う者などが、募集に応じて労働者となろうとする人に対して法第5条の3第1項の規定により明示した内容に関する記録を、保存するよう定めています。保存の終点は、その明示に係る募集等が終了する日です。ただし、その日以降に、その明示に係る労働契約を締結しようとする人については、労働契約を締結する日までです。
条文が書いているのは、この終点までの保存です。読んだ条文(職業安定法施行規則第4条の2第7項、労働基準法第15条、同施行規則第5条)には、内定時の文面や、AIへの入力と出力の保存を定める語は見当たりませんでした。ただし、ほかの法令が別に保存を定めている場合があります。労働基準法には、労働関係の書類の保存を定める条文(第109条)があることを確認しましたが、その内容と版は読んでおらず、内定後の文面が当たるかどうかも確認していません。終点より後の期間を含め、保存の対象と期間は、社会保険労務士に確認したうえで、自社の方針を決めてください。
残す場所を決めるときに、次の四点を先に決めておけます。
- 残す対象:募集時に実際に出した最終版。媒体ごとに文言が違うときはそれぞれ。掲載後に直したときは、直す前の版。
- 置き場所:照合の元になる正本を一か所に決める。採用管理システムとAIの正本の分け方は、採用管理システム(ATS)とAIは何が違うかで扱っています。求人を直すと元の版が残らない運用になっていないかも確かめます。
- 担当と時期:募集を終えるときに、誰が保存するか。内定を出した人に、契約を締結する日まで、募集時の版が消えずに残るか。
- 照合の記録:照合表の記入済みの版を、募集時の版とは別に、誰が、どこに残すか。
周辺の解説3ページで確認できたこと、できなかったこと
2026年10月21日に、内定通知書や労働条件通知書、内定後の労働条件の変更を説明するウェブの3ページの本文を取得して読みました。人事メディアの解説2ページと、人事のQ&Aサイトの相談1件です。確認した範囲では、この記事と近い記述がありました。労働条件通知書は労働基準法第15条と施行規則第5条にもとづく書類で、内定通知書と一緒に送るのが一般的だとする説明、労働条件は契約が成立するまでに書面で明示する義務があり、内定通知書や内定承諾書と同じ時期に交付するのが望ましいとする説明、入社までに労働条件が変わるなら変更内容を迅速に明示し、不利益変更には原則として合意が必要とする説明、2024年4月からの明示事項の追加に触れ、就業場所と業務内容は将来の配置転換などで変わる可能性があるものも明示が求められるとする説明、電子的に送る場合の注意(応募者の同意を得る、改ざん防止の措置を講じる、応募者がいつでも出力できる状態にする)、採用通知と内定通知の電子化の効果として書類の確実な保管を挙げる一文、試用期間を募集要項の期間から延ばす場合の個別の相談に対する回答(募集要項も速やかに直し、内定者にも理由と変更内容を周知する、内定者にも労働条件の明示義務があるとする意見で条文の番号は示されていない、発効日より後に内定した人から適用し遡及は避ける、内定前に周知する、募集要項と違うと異議を唱える人が出る可能性に触れたうえで同意を得る努力をする、といった意見)です。この記事の整理は、そうした記述と同じ方向の部分を含みます。
一方、確認した3ページの本文では、募集時の求人票や募集要項の条件と内定時の文面を、項目ごとに照らす手順は確認できませんでした。募集時の明示と契約締結時の明示を、職業安定法と労働基準法の条文の言葉で分けて整理する説明も確認できませんでした(「職業安定」の語は3ページとも本文にありません)。AIで文面を下書きさせる場合の確認や確認者について書いた記述も、確認できませんでした。人事メディアの2ページには、他の記事や資料の題名にAIの語がありますが、いずれもAIで労働条件の文面を作ることの説明ではありません。また、募集時に示した版を記録として残す説明も、確認できませんでした。個別の相談には、募集要項に書いた試用期間と変更後の期間が食い違う場面が出ていますが、一般的な照合の手順としては書かれていません。これは確認した3ページの範囲の話で、ほかの解説や資料に同様の記述がないとは言いません。
採用AXの公開ページに書かれていること、書かれていないこと
WITHPROJECTSの採用AXの公開ページは、採用AXを、応募対応、日程調整、情報整理、評価記録、未対応の管理、入社前の引継ぎといった採用業務を、AI・ルール・システム連携・人の役割に分け直し、実際に運用できる形に設計・実装することと説明しています。入社前の引継ぎについては、AIや決まった処理に任せやすいこととして情報のまとめと必要な連絡の下書きを、人が決めることとして内容の確認と本人への最終連絡を挙げています。設計の進め方には、AIの出力を誰が確認するか(責任分界)と、例外が出たときの動きを決めることも挙げています。
当社の公開ページには、労働条件通知書の作成や交付、募集時の記録との照合を、提供範囲として記載していません。この記事の照合表は、会社の中で先に決められる様式であり、採用AXの提供内容を説明するものではありません。この記事は、AIが労働条件を決めるとは書いていません。文面が条文に適合しているかも、示しません。
採用業務全体をAI・ルール・人にどう分けるかは、採用AX(採用のAI化支援)にまとめています。内定後に、配属先へ何を渡すかの線引きは、内定者の情報を配属先に引き継ぐとき、何を渡し何を渡さないかで扱っています。
読んだ原文の版と、読んでいないもの
- 職業安定法(法令ID 322AC0000000141)第5条の3。e-Gov法令API v1とv2で取得。2026年4月1日施行の版。
- 職業安定法施行規則(法令ID 322M40002000012)第4条の2。2026年10月1日施行の版。令和6年4月1日、令和7年4月1日、令和8年4月1日、令和8年10月1日に施行された4つの版で、第4条の2の文言が同一であることを確認。令和5年10月23日施行の版との比較で、令和6年4月1日に加わった項目を確認。
- 労働基準法(法令ID 322AC0000000049)第15条。2026年7月17日施行の版。
- 労働基準法施行規則(法令ID 322M40000100023)第5条。2026年4月1日施行の版。
- ハローワーク青梅(東京労働局)とハローワーク瀬戸(愛知労働局)の、求人票に明示する労働条件の追加を知らせるページ。
読んでいないものは、労働基準法と同施行規則のほかの条文(記録の保存を定める第109条の内容と版を含む)、労働基準法の未施行の改正が第15条と施行規則第5条に及ぶか、職業安定法に基づく指針、厚生労働省のリーフレットや、求人票と労働条件通知書の相違に注意を促す案内(検索結果で存在は確認したが、本文は読めていません)、裁判例、内定通知の法的な位置づけ、電子的な交付に関する他の通知です。個別の適否は、社会保険労務士や所管の労働局に確認してください。公開の前には、条文の現行の版をもう一度確認してください。
募集時の記録と内定時の文面の照らし方を、自社の採用の流れで整理したい方へ
募集時の版がどこにあり、内定時の文面を誰が下書きし、誰が照らし、誰が差を決めるのかを、一覧にしておくと、AIを使う前に、確認の抜けが見えます。

