運行管理者が休んだ日の点呼はどうするか:補助者の選任と、営業所の「不在の日」の備え

目次
運行管理者が休んだ日の朝、点呼は誰が行うのか。前日の夜に急な欠勤の連絡が入ったとき、運行の可否に迷う場面では誰に聞くのか。運行管理者が1人の営業所では、「不在の日」がそのまま点呼の空白になりかねません。この記事は、運送会社の経営者や運行管理の責任者が、運行管理者の休暇・病気・退職に備えて、補助者の選任と営業所の体制を事前に決めておくための整理です。一般貨物自動車運送事業を前提にしており、個別の適否の判断はしません。条文や通達の読み方に迷う点は、運輸支局や専門家に確認してください。
運行管理者の日々の業務全体は運行管理者の役割と毎日やることで扱っています。ここでは、運行管理者が不在になる日の点呼と体制に絞ります。遠隔点呼や自動点呼で点呼を行う方法は要件と届出が別にあるため、この記事では扱いません。
1.まず押さえる:補助者は「代わり」ではなく「補助」
貨物自動車運送事業輸送安全規則の第7条は、事業者が運転者等に点呼を行い、報告を求め、確認し、必要な指示を与えること、そして点呼を行った者と受けた運転者等の氏名、点呼の日時や方法などを記録して一年間保存することを定めています。運行管理者の業務の一つとして、この点呼と記録の保存を挙げているのが、同規則の第20条です。
補助者は、同規則の第18条第3項に基づく制度です。運行管理者資格者証を持つ人、または国土交通大臣の認定を受けた運行の管理に関する講習(一般に基礎講習と呼ばれるもの)を修了した人のうちから、運行管理者の業務を補助させるために選任することができます。「選任しなければならない」ではなく、「選任することができる」という書き方です。
国土交通省の通達(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)は、補助者について次のような整理をしています。
- 補助者は、運行管理者の履行補助を行う者であって、代理業務を行える者ではない。ただし、点呼に関する業務は、その一部を補助者が行うことができる。
- 補助者を選任して点呼の一部を行わせる場合でも、その営業所で選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければならない。
- 補助者が業務の中で、運転者が酒気を帯びている、疾病・疲労・睡眠不足などで安全な運転ができない、無免許運転や大型自動車等無資格運転、過積載運行、最高速度違反行為のいずれかに該当するおそれを確認したときは、直ちに運行管理者に報告し、運行の可否の決定等について指示を仰ぎ、その結果に基づいて各運転者に指示を行う。
- 補助者を選任する場合は、補助者の選任方法、職務、遵守事項等を運行管理規程に明記しておく。
つまり、補助者が点呼を行えても、運行の可否に迷う場面では運行管理者に報告して指示を仰ぐ前提です。「運行管理者が休みの日に、その報告と指示をどう成り立たせるか」が、不在の日の備えの中心になります。通達の該当箇所には、その連絡の手段まで指定した記載は見当たりません。この記事では、不在の日の点呼は運行管理者または補助者が担う前提で整理します。それ以外の人に任せてよいかは、個別の事情を運輸支局に確認してください。
2.不在の日は4つに分かれる:決めておくことが違う
「運行管理者がいない日」と一括りにすると、備えが漏れます。次の表は、不在のパターンごとに、先に決めておくことを整理した見取り図です。
| 不在のパターン | 例 | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 予定された休み | 有給休暇、研修、定期の通院 | 休みの前に点呼の担当を割り当てる。報告先への連絡手段を確認する。残りの日に運行管理者が行う点呼の回数を見積もる |
| 急な欠勤 | 病気、家庭の事情 | 当日の朝、誰が点呼を引き継ぐか。運行管理者と連絡がつかないときの取り決め。運転者への周知の仕方 |
| 早朝・深夜の時間帯 | 運行管理者も補助者も出勤していない時間に点呼が発生する | その時間帯を担当する人と、運行管理者への連絡の道筋 |
| 長期の離脱・退職 | 長期の休職、退職、異動 | 営業所の運行管理者の人数が足りているか。後任の選任と届出。補助者の育成 |
三つ目の早朝・深夜については、通達に明確な記載があります。車庫と営業所が離れている場合や、早朝・深夜に点呼を行う人が営業所に出勤していない場合は、対面でなく電話その他の方法による点呼が認められる「運行上やむを得ない場合」には該当しない、とされています。人がいない時間帯だから電話で済ませる、という運用は、この通達の記載では認められる場合に当たらないということです。
四つ目の長期の離脱や退職は、補助者の問題ではなく、運行管理者の選任の問題です。輸送安全規則の第18条第1項は、営業所ごとに、運行を管理する事業用自動車の数を30で除して得た数(1未満の端数は切り捨て)に1を加えた数以上の運行管理者を選任することを求めています。5両未満の事業用自動車を管理する営業所には、地方運輸局長が認めた場合に選任を要しないとする但し書があります。条文は運行管理者の人数について書かれており、補助者を人数に含める旨の記載は見当たりません。運行管理者を選任または解任したときは、貨物自動車運送事業法の第16条第3項により遅滞なく届け出ることとされ、通達は遅くとも一週間以内の届出を指導する、としています。
3.「不在の日の割当表」をつくる
ここからは、営業所ごとに1枚で決めておく「不在の日の割当表」の作り方です。法令が求める様式ではなく、一般的な進め方の提案です。実績や効果の数値は含みません。
手順1:点呼の「回数」を時間帯別に数える
乗務前と乗務後の点呼が、いつ、何回発生するかを、時間帯別に書き出します。運行管理者が出勤している時間帯と、していない時間帯(早朝・深夜など)を分けておくと、誰がどこを担当するかを割り当てやすくなります。
手順2:運行管理者が行う点呼の回数を、月ごとに見積もる
運行管理者が行う点呼は総回数の少なくとも3分の1以上、というルールは、休みが多い月や補助者が増えた月に、気づかないうちに下回りやすい性質があります。点呼の総回数を出し、その3分の1以上を運行管理者が行えるかを、休暇の予定を入れて事前に見積もります。
次は計算例です。数字は架空で、実績ではありません。仮に1か月で数えるとして、運転者10人が月に22日、乗務前と乗務後の点呼を受けるなら、総回数は440回です。その3分の1は約146.7回なので、運行管理者は147回以上を担う必要があります。どの期間で数えるかは、通達の当該項目には書かれていません。月ごとなど、社内で数える単位を決めたうえで、運輸支局に確認してください。
手順3:補助者の候補と、要件・規程を確かめる
補助者の候補が、資格者証の保有または認定講習の修了という要件を満たしているか、その書類を営業所で示せるかを確かめます。あわせて、運行管理規程に補助者の選任方法・職務・遵守事項が書かれているかを見ます。補助者の人数は、点呼の回数と時間帯、運行管理者の休みの頻度から考えます。
手順4:運行管理者への報告の道筋を決める
補助者が先の5つのおそれを確認したときに、誰が、どの手段で運行管理者に連絡し、誰が運転者へ指示を伝えるのかを書いておきます。運行管理者が休みの日にも連絡がつくのか、つかない場合は誰が判断するのか(別の運行管理者がいるのか、いないのか)を、休みの種類ごとに決めます。決めきれない部分は、「運行管理者と連絡がつかないままでは出発させない」という扱いにするかどうかも含めて、運輸支局や専門家に確認してください。
手順5:記録の書き方を決める
点呼の記録には、点呼を行った者と受けた運転者等の氏名、点呼の日時・方法などを残すことが規則で定められています。補助者が行った点呼であることが分かること、運行管理者に報告して指示を受けた場合は、その内容と時刻があとから追えることが、記録の書き方を決めるときの目安になります。
割当表のひな形
次の表は、記入のしかたを示す例です。自社の営業所に合わせて作り替えてください。
| 時間帯・点呼 | ふだんの担当 | 運行管理者が休みの日の担当 | 運行管理者への連絡手段 | 運行の可否を決める人 | 記録の置き場所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 早朝・乗務前(例) | 運行管理者 | 補助者A | (自社で決める) | (自社で決める) | 点呼記録簿 |
| 日中・乗務前(例) | 補助者A | 補助者A | (自社で決める) | (自社で決める) | 点呼記録簿 |
| 夕方・乗務後(例) | 補助者B | 補助者B | (自社で決める) | (自社で決める) | 点呼記録簿 |
| 深夜・乗務前後(例) | (空欄) | (空欄) | (空欄) | (空欄) | (空欄) |
空欄が残る時間帯が、不在の日に点呼が止まりやすい場所です。
4.つまずきやすいパターン
- 補助者を選任したが、運行管理規程に選任方法や職務を書いていない
- 補助者の要件を満たしているかを確かめないまま、事務の担当者などに点呼を手伝ってもらっている
- 運行管理者と補助者が、同じ日に休む予定になっている
- 補助者を増やして点呼を任せるうちに、運行管理者が行う点呼が3分の1を下回りかねない状態に気づかない
- 運行管理者への連絡がつかないまま、補助者が一人で運行の可否を決めている
- 運行管理者が退職の意向を伝えてから、後任探しと補助者の育成を始める
「隣の営業所の運行管理者に頼めばよい」と考える場合は注意が必要です。通達は、運行管理者は他の営業所の運行管理者または補助者を兼務することはできない、としています(旅客自動車運送事業の営業所が同一敷地内にある場合などの例外が別に書かれています)。他の営業所の運行管理者等が点呼を行う方法は、通達の第7条に条件つきで定められているため、使えるかどうかは運輸支局に確認してください。
5.向いている進め方・向いていない進め方
営業所の状況ごとに、進め方の目安を次のように分けて考えられます。
- 運行管理者が1人で、休みの日や早朝・深夜の点呼が回らない場合は、要件を満たす補助者を選任し、割当表と報告の道筋を決める進め方が向いています。
- 運行管理者が複数いて、休みが重ならないように回せる場合は、運行管理者どうしの休暇の調整が中心になります。複数の運行管理者を選任する営業所では、統括運行管理者の選任が必要です(輸送安全規則の第18条第2項)。
- 長期の離脱や退職が見込まれる場合は、補助者の整備より先に、運行管理者の選任数が足りるかと、後任の選任・届出の段取りを確認する進め方が向いています。
- 「補助者を置けば、運行管理者がいなくても回る」ことを期待する場合は、向いていません。補助者は代理を行う者ではなく、運行管理者が行う点呼は総回数の一定割合を下回れないためです。
6.相談前に用意するメモ
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 営業所と運行管理者 | 営業所ごとの運行管理者の人数、補助者の人数、補助者の要件の確認状況 |
| 点呼の時間帯 | 乗務前・乗務後が発生する時間帯と、運行管理者・補助者が出勤している時間帯 |
| 不在になりやすい日 | 運行管理者の休暇予定、定期の通院や研修、繁忙期 |
| 連絡の取り方 | 休みの日の運行管理者への連絡手段と、つながらないときの取り決め |
| 規程と記録 | 運行管理規程への補助者の記載、点呼記録での補助者の書き方 |
| 確認したいこと | 運輸支局や専門家に聞きたいこと(数え方、他営業所の扱いなど) |
空欄があっても構いません。埋まっている項目と、これから確認する項目を分けておくと、相談で話すことが整理されます。
当社の運送向けの支援について
当社は、運送会社向けに、点呼・日報・荷待ち/荷役・整備・労務の記録について、抜け漏れと矛盾を毎日検知し、是正タスクを発行し、監査提出用のフォルダを整える運用を設計しています。点呼を行う人や、運行の可否を決める人を決めるのは、各社の運行管理規程と運行管理者の役割であり、当社が代わりに決めるものではありません。法令判断や行政対応の最終判断はお客様に行っていただき、必要に応じて専門家と連携する、という前提です。
具体的な内容は運送の監査対応をAIで仕組み化|点呼・日報・運行管理にまとめています。外部に任せる範囲の考え方は運送の監査対応、委託先の選び方で、記録運用の棚卸しは運送会社の記録運用を見直す前に、まず自社の現状を棚卸しする5つの視点で、自動点呼の要件は自動点呼の要件|中断・中止・不正防止・規程整備で整理しています。
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