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AIと旧手順を並べて動かす期間は、何を見て、いつ終えるのか

AI

PoCは終わり、AIの手順へ切り替える日が近づく。「しばらくは旧手順も残して様子を見る」と決めたものの、その間に何を比べるのか、いつ旧手順をやめるのか、問題が出たら誰が本線から外すと決めるのかが、まだ決まっていない。業務責任者や経営者のもとで、この状態のまま切替日が近づくことがあります。

この記事は、旧手順とAIの手順の両方が動かせる状態にある期間だけを扱います。期間の中で決めることを、分かれ目ごとに順に示します。止める・直す・続けるの判断条件と、戻すときの手順の書き方はAI導入の効果は何で測るかに、運用の場面で止める・戻すを誰が持つかはAI化は内製か外注か併用かにあります。ここでは重ねません。期間の長さ、件数、基準の数値は、業務の周期や誤りの重さで変わるため示しません。

並走期間とは、どちらの手順も「本線にできる」状態で置いてある期間のこと

この記事では、旧手順とAIの手順の両方が動かせる状態で置かれている期間を、並走期間と呼びます。一般には、並行運用や並行稼働と呼ばれることもあります。AIを本線から外して旧手順に戻すことを、切り戻しと呼ぶ場合があります。並走といっても、置き方は一つではありません。

  • 旧手順が本線で、AIは横で動かす:業務の結果は旧手順のものを使う。AIの結果は使わずに保存し、比べるだけにする。
  • AIが本線で、旧手順は待機する:業務の結果はAIの手順で出す。旧手順は、いつでも回せる状態で残す。
  • 業務を分けて、両方が本線になる:案件の種類や工程で、旧手順とAIの手順を使い分ける。

切り替えは、一つ目から二つ目へ進み、最後に旧手順を片づける、という順で考えると整理しやすくなります。その途中に、決めておきたい分かれ目が五つあります。

  1. 取り戻しにくい操作の手前で、AIの結果を本線に使わない段階を置くか
  2. 何を突き合わせるか
  3. 旧手順を「動かせる状態」で残すとは、何を残すことか
  4. 旧手順をやめる合図と、AIを本線から外す合図は何か
  5. 外すと決めるのは誰で、再び本線に戻す条件は何か

分かれ目1:取り戻しにくい操作の手前では、AIの結果を本線に使わない段階を置く

取り戻しにくい操作とは、社外へ送る、取引先へ通知する、金額や日付を確定する、台帳やシステムに登録して後から直しにくくなる、といった操作を指します。AIの結果をそのまま本線にすると、誤りが外へ出てから気づくことになりかねません。そこで、操作の種類によって並走の置き方を変えます。次の表は、置き方を考える出発点で、この表の通りにすれば安全になるという意味ではありません。

業務の中身並走の置き方の案突き合わせを厚くする場所
社内向けの下書きや要約。人が読んでから使う初めからAIを本線にし、旧手順は待機とする案も考えられる。読む人の確認が、突き合わせの代わりになるかを確かめる読んだ人が直した箇所
仕分け、分類、転記。誤りが後の工程で見つかるAIを本線にしつつ、後の工程で見つかった誤りが、作業した側へ戻る経路を作る後の工程から戻された案件
金額、日付、宛先など、値を確定するまず旧手順を本線にし、AIの結果は横で保存して比べる確定する直前の値の食い違い
社外へ送る、取引先へ通知する送る直前の人の確認を残す。AIの案は、送らずに保存して比べる期間を置く確認の段階で止めた案件
登録すると直しにくい(台帳、申請、基幹システム)登録前の画面や入力案の段階で、旧手順の結果と比べる登録内容の食い違い

どの操作を取り戻しにくいと見るかは、この表を出発点に、業務ごとに現場と確かめる必要があります。どの工程を人が決め、誰が確認し、例外をどこへ戻すかを業務ごとに決める進め方は、AI導入に現場が反発するとき、説得の前に決める「業務ごとの線引き」で扱っています。

分かれ目2:突き合わせるのは、集計の数字より、案件ごとの「差」とその置き場所

並走で見たいのは、全体でどれだけ合っていたかより、同じ案件で旧手順とAIの結果がどう違ったかです。案件ごとに二つの結果を対にして残すと、あとから差の原因をたどれます。件数や所要時間などの集計の見方は、先に挙げた効果測定の記事にあります。

突き合わせる項目見ること並走期間で見えやすいこと
結果の差同じ案件で、旧手順とAIの結果が同じか。違うときは、どの項目が違うか受入試験の事例に入っていなかった種類の入力
差の原因の区分差を、AIの誤り、旧手順の揺れ、決まりが書かれていなかったもの、入力の違い、に分けるどの区分が多いかで、直す人が変わる
旧手順が黙ってやっていた確認手順書にはないが、担当者が見ていた点(添付の中身を見て気づく、取引先ごとの癖など)が、AIの手順で抜けていないか担当者に聞かないと出てこない作業
確認と手直しの手間AIの結果を確かめて直すのにかかった手間と、待ちが生じた場所確認する人が増えたり、確認が後回しになったりしていないか
例外の戻り方AIが扱えなかった案件が、誰に、どんな形で戻り、滞らずに処理されたか戻り先の担当者が、受け取った案件を処理できているか

旧手順の結果を、正解とみなさないことも決めておきます。旧手順にも、担当者による揺れがあります。差が出たとき、どちらが正しいかを決めるのは誰かを、並走を始める前に決めます。可能であれば、旧手順の担当者どうしの結果の差も取っておくと、AIとの差が「AI特有の差」なのか、「もともとある揺れ」なのかを見分ける材料になります。

差の原因の区分のうち、決まりが書かれていなかったものは、AIの手順の不具合ではなく、業務のルールがまだ言葉になっていないことを示す場合があります。原因を一つずつ絞る進め方は、AIの出力が期待と違うときは、症状から疑う場所を決めて、指示・入力・参照文書・業務のルール・モデルを1か所ずつ確かめるで扱っています。

分かれ目3:旧手順を「動かせる状態」で残すとは、手順書以外に何を残すことか

旧手順を残すと言うとき、手順書のファイルが残っていれば足りるとは限りません。切り替えたあとの旧手順は、使われなくなるぶん、動かせない状態になっていきます。

残すもの動かせなくなる例手入れの担当として決めておくこと
手順書切替後に変わった取引先や様式が反映されず、古い版のまま旧手順側の変更も反映する人
回せる人旧手順を知る担当者が異動や休みで不在になる。AIの手順に慣れて、旧手順の感覚が薄れる回せる人の名前と、その代わりの人。定期的に実際に一件回す機会
道具と権限旧手順で使う画面や共有フォルダの権限、契約が、片づけ作業で閉じられる権限や契約を整理する前に、旧手順への影響を確認する人
入力の様式と連絡先AIの手順に合わせて入力の様式を変えたため、旧手順に渡せない形になっている様式を変えるときに、旧手順でも読めるかを確かめる人

動かせるかどうかは、一件実際に旧手順で回すまで分かりません。待機の旧手順は、切替の前に一度、切替後も節目ごとに、実際に回して確かめる案が考えられます。

旧手順を残すと、二重の手間が生じます。AIの結果を保存して比べる作業も、現場の誰かの時間を使います。この手間を無視して「念のため全部残す」と書くと、並走は現場の負担になり、形だけの比較になりかねません。そこで、比べる範囲を分けます。

  • 取り戻しにくい操作の手前は、全件を突き合わせる。
  • それ以外は、抜き取りで突き合わせる。
  • 差の出方が落ち着いた種類の案件から、抜き取りを減らす。

どこまで全件にするか、誰がその時間を持つかは、切替の計画に書いておきます。

分かれ目4:旧手順をやめる合図と、AIを本線から外す合図は、切替の前に書いておく

切替のあとで基準を作ると、その時の状況や声の大きさで決まりやすくなります。逆に基準がないと、「もう少し様子を見よう」が続き、旧手順の維持に手間をかけ続けたまま、誰もやめると言えなくなります。そこで、二つの合図を、切り替える前に書いておきます。期間は日数だけで終わりを決めず、通過した条件で書きます。ただし、条件がそろわないまま続くと、並走が固定化するおそれがあります。そこで、条件を満たしたかを見直す日(期限ではなく、判断をやり直す日)も、先に置いておきます。

旧手順をやめてよい合図の例です。すべてがそろったときに、やめる準備に入ります。

  • 業務の山と谷(月末、繁忙期、年度の切り替わりなど、入力の種類や量が変わる時期)を、並走中に通った。
  • 差の原因が区分でき、区分ごとの直し先と担当が決まっている。
  • 新しい種類の差が見つからない状態が、続いている。続いている長さは、業務の周期に合わせて自社で決める。
  • 例外の戻り先が滞らず、戻り先の担当者が納得している。
  • 確認と手直しの手間が、現場が続けられると判断した範囲に収まっている。
  • 旧手順の持ち主が、やめることに同意している。やめたあとに見返せる記録の置き場所が決まっている。

AIを本線から外す合図の例です。一つでも当てはまれば、外すかどうかの判断に進みます。

  • 取り戻しにくい操作で、AIの誤りが外へ出た、または出かけた。
  • 原因の区分がつかない差が、続いている。
  • 確認が追いつかず、確認を飛ばす人が出ている。
  • AIの指示や設定、利用しているサービス側が変わったあと、差の出方が変わった。
  • 現場の誰かが「おかしい」と報告し、確認の結果、それが裏づけられた。

合図の数値(何件を超えたら、どれくらいの間続いたら)は、業務ごとの誤りの重さで変わるため、この記事では示しません。書くときは、数だけでなく、それを数える範囲と期間をそろえて書きます。

二つの合図を書いておくと、並走中の現在地を、次のように読めます。

いまの状況次の判断
やめる合図がすべてそろった旧手順を片づける準備に入る。記録の保管場所を決めてから、権限や契約の整理を最後に行う
やめる合図の一部が未達未達の項目を埋めるために並走を続ける。何が満たされれば終えるかを、書き直す日を決める
外す合図が一つでも出たAIを本線から外すかどうかを、分かれ目5で決めた人が判断する
どちらでもない状態が続く並走が惰性になっている。合図の書き方か、突き合わせる項目を見直す

使い方の例を、通常の段落で示します。架空の例です。見積書の金額欄をAIが下書きし、担当者が確認して送る業務で、並走期間の最初は担当者が従来どおり作った金額を本線にし、AIの金額案は保存して比べていました。差が出た案件を区分すると、AIの誤りと担当者による揺れのほかに、手順書にない割引の決まりが原因の差が残りました。この場合、「差の原因が区分でき、直し先と担当が決まっている」が未達なので、並走は続けます。割引の決まりを文書に書く担当を決め、書いたあとに同じ種類の案件で、もう一度比べます。

分かれ目5:外すと決める人と、再び本線に戻す条件

合図が出たとき、誰が何をするかが決まっていないと、報告が止まったり、判断が先送りされたりします。役割を三つに分けておきます。

  • 気づいて報告する人:現場の確認者。委託先がいる場合は、委託先も含む。報告は、合図に当てはまるかどうかを迷っても出してよい、と決めておく。
  • 本線から外すと決める人:業務の結果に責任を持つ人。休日や夜間に不在の場合の代わりの人も決めておく。委託先が見立てを示しても、外すかどうかを決めるのは自社の側に置く案が考えやすい。
  • 再び本線に戻すと決める人:外すと決めた人と同じか、その上の立場の人。

報告する人と、決める人を分けておくと、報告のためらいを減らせる場合があります。外すことを「失敗の認定」ではなく、あらかじめ書いておいた動きとして扱いやすくなるためです。外すと決めたあとの手順の書き方は、先に挙げた二つの記事にあります。

外したAIの手順を再び本線に戻す条件も、外すと決めた時点で書いておきます。

  • 外す合図が出た原因が、区分でき、直し先が決まっている。
  • 直したあとで、AIの結果を横で動かして比べる段階(分かれ目1の一つ目の置き方)に戻し、同じ種類の案件で外す合図が再び出ないことを確かめた。
  • 外す合図の書き方が、足りたかどうかを見直した。

誰が、いつ、どの合図を根拠に外したかも、短く記録しておきます。

並走の相手がない業務、並走を置きにくい業務

この見方は、旧手順があり、AIの結果と対にできる業務を前提にしています。次のような業務では、そのままは当てはまりません。

  • 旧手順がもともとない、新しく始める業務:突き合わせる相手がありません。自社の事例を集めて合格の判断基準を書く受入試験の進め方が近くなります。AIの受入試験は、何を・誰が採点すれば「合格」と言えるのかで扱っています。
  • AIの導入で、入力の様式や工程そのものを変える業務:最終の結果が対にならないことがあります。工程の途中の成果物(読み取った項目など)で対にするか、小さな範囲に区切って切り替える案が考えられます。
  • 旧手順を回す人手が、すでにない業務:動かせる状態で残すことができません。外すと決めた場合の受け皿を誰が用意するかが決まらないなら、切り替える範囲を狭めることから考えます。

並走の置き方は、切り替えの設計と一緒に決めておく

WITHPROJECTSの公開しているサービスページ(AI業務設計・業務AX)では、PoCの時点で最初に決めておく点として、合否の基準、本番で使うデータ・権限・環境への切り替え方、稼働後の運用を挙げています。 同じページには、AIは誤ることがあり、誤ったときに誰が気づき、誰が直し、どこまで戻せるかが決まっていないと、現場は結局すべてを人が見直すことになる、とも書かれています。 この記事の並走期間の見方は、一般的な進め方の提案であり、WITHPROJECTSが提供する支援の内容や納品物を示すものではありません。

工程の全体はAI業務設計・業務AXにまとめています。

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