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AIに社内文書を読ませる前の点検:どれが正か、判断の根拠、例外の扱い、更新の持ち主を文書ごとに確かめる

AI

社内のマニュアルや過去資料をAIに使わせたい。そう考えて資料を集めはじめると、「同じ手順の資料が3つある」「『状況に応じて判断』としか書いていない」「詳しい人に聞かないと分からない部分がある」といった状態に気づくことがあります。AIは、渡された文書に書かれていることを手がかりに答えます。そのため、ツールを選ぶ前に、文書の側に何が書かれていて、何が書かれていないかを確かめておく価値があります。この記事は、AI化を進める業務責任者や、総務・情報システムの担当者が、既存の文書を1つずつ点検するための観点と進め方をまとめたものです。

置き場所の整理や、古い版を取り除く作業は、ナレッジ整備の解説でもよく取り上げられています。ここではそこを済ませたあとでも残りやすい、「文書の中身が、AIに使わせられる書き方になっているか」の点検を中心に扱います。特定の製品の推奨や、精度・効果の見込みは書きません。

相談前に整理する3ステップの図:1.現状を書き出す(目的と範囲・使うデータ・判断する人)、2.判断の基準を決める(何を任せるか・誰が判断するか・どこまで確認するか)、3.任せる範囲をそろえる

点検の対象は「置き場所」ではなく「文書が何を語っているか」

文書が整理されていても、AIが使うと困る場面は残ります。たとえば次のようなものです。

  • 版の違う2つの文書が、どちらも「現行」と読める
  • 手順は書いてあるが、その手順をとる条件が書いていない
  • 「原則として」と書いてあるのに、例外のときの扱いがどこにもない
  • 判断の理由が書かれておらず、似た場面で応用できない
  • 内容が変わったとき、誰が直すのかが決まっていない

人間なら、隣の席の人に聞いて補えます。AIに使わせる場合は、聞いて補う相手がいません。補う代わりに、文書に書き足すか、使わせる範囲から外すか、人に戻すかを、先に決めておく必要があります。

文書を点検する5つの観点

1つの文書につき、次の5つを確かめます。

観点文書で確かめること書かれていないと起きやすいこと先にやること
1. どれが正か版、適用が始まった時期、旧版の扱いが分かるか旧い手順と新しい手順の両方を根拠に答えてしまう正とする1つを決め、旧版は参照対象から外す
2. 書き方の粒度1つの文書に、方針と手順と注意が混在していないか。用語が揺れていないか同じ意味の語を別の内容と受け取る。途中から話題が変わる文書を目的ごとに分け、用語を統一する
3. 判断の基準と理由「どういうときに、なぜそうするか」が書かれているか似た場面で、理由なく同じ対応を示す判断する人に聞き取り、基準と理由を書き足す
4. 例外の扱い例外の条件、確認する相手、結果の残し方が書かれているか例外の案件でも通常の手順を示してしまう例外の条件と渡す先を、文書の中に明記する
5. 更新の持ち主見直す担当者と、見直しのきっかけが決まっているか制度や画面が変わっても、文書だけが古いまま残る担当者と見直しの契機を、文書に記録する

観点1と2は、すでに整備を進めている場合、できていることもある部分です。観点3と4は、文書化されないまま担当者の頭の中にあることがあり、見落とされやすい部分です。

曖昧な一文を見つけて、点検の問いに変える

文書の中には、人が読めば分かるが、AIには手がかりにならない言い回しがあります。見つけたら、次のように問いに直します。表の右端の書き足し例は、すべて架空のものです。

文書にある一文点検の問い書き足す内容の例(架空)
状況に応じて判断する状況とは何を指すか。判断するのは誰か見積の金額が一定の範囲を超える場合は、課長が判断する
原則として、〇〇とする原則から外れるのは、どんなときか取引先から別の書式の指定があるときは、指定に従う
従来どおり処理する従来とは、いつからの運用か。今も同じか以前の運用は終了している。現行の手順は別の文書にある
担当者に確認するどの担当者か。何を伝えて確認するのか経理担当に、請求書の番号と相違点を添えて確認する
別紙のとおり別紙は最新か。AIに渡す範囲に含めるか別紙の改定日を記載し、同じ場所に置く
必要に応じて対応する必要かどうかは、何で決まるか入力内容に不足があるときに、依頼元へ戻す

この表に当てはまる一文が多い文書は、書き足すか、人が判断する前提の資料として使わせる範囲を絞るか、先に決めておきます。

点検の進め方(実装手順)

  1. AIに答えさせたい質問を、いくつか決める。実際に社内で繰り返し聞かれている質問を選びます。文書の山から始めず、質問から始めるほうが、点検の範囲を絞りやすくなります。
  2. 質問ごとに、答えの根拠になる文書を探す。見つからない場合は、「文書がない」と記録します。担当者の頭の中にある知識として扱います。
  3. 見つかった文書に、5つの観点を付けて確かめる。「書かれている」「一部だけ」「書かれていない」の3段階で十分です。
  4. 「一部だけ」「書かれていない」の文書は、対応を選ぶ。直す、書き足す、使わせる範囲から外す、のいずれかです。迷う文書は、いったん外す側に置きます。
  5. 書き足しは、判断している人に聞いて行う。文書を書く人と、判断している人が違う場合は、判断している人の言葉で残します。
  6. 更新の持ち主と、見直しのきっかけを決める。制度の変更、画面の変更、担当部署の変更など、文書が古くなる出来事を先に挙げておきます。

文書が何も語っていないとき、AIに何をさせるか

点検をしても、すべての質問に文書が用意できるとは限りません。そのときは、文書に書かれていない質問に対して、AIが答えを推測して返すのではなく、「この文書には書かれていません」と示して、担当者へ戻す扱いにします。戻す相手と、戻すときに添える情報も、あらかじめ決めておきます。

AIに任せる範囲と、人が決める範囲の線引きを現場と合意する進め方は、AI導入に現場が反発するとき、説得の前に決める「業務ごとの線引き」でまとめています。

AIに読ませる準備を進めやすい文書、先に延ばしたほうがよい文書

判断条件の例です。

進めやすい文書:

  • 手順や基準が、書いた人以外にも同じように読み取れる
  • 更新する担当者が決まっていて、最新の版を示せる
  • 例外のときに誰へ戻すかが、文書の中に書かれている

先に延ばしたほうがよい文書:

  • 判断の基準が担当者の経験に依存していて、聞き取りの時間が取れない
  • 版が複数あり、どれが現行かを示せる人がいない
  • 個人情報や機密を含み、AIに渡してよいかを社内で決められていない

個人情報、著作権、機密区分に関わる文書をAIに渡してよいかは、この点検では判断しません。社内の規程を確認したうえで、必要に応じて専門家や所管に相談してください。

うまくいかないパターン

  • 文書を集めることが目的になり、どの質問に使わせるのかが決まっていない
  • 旧版を残したまま取り込み、現行と旧版の両方を根拠にした回答が出る
  • 「担当者に確認」と書かれた箇所を、そのまま放置している
  • 書き足した内容を、判断する人に見てもらわず、書く人の推測で埋めている
  • 点検は行ったが、更新の持ち主が決まらず、数か月後に再び古くなる

WITHPROJECTSの進め方

WITHPROJECTSでは、業務のAI化を、要件整理、設計、PoC、受入試験、運用改善の工程で進めます。 AIが担う部分と、人が判断する部分を分けて設計することを基本にしています。

どの業務から着手するかはAI業務設計・業務AX、依頼前に社内で整理しておくことはAI導入の見積もりを頼む前に、社内で整理しておく5つのこと、委託先の比較は業務AI化の委託先の選び方もご覧ください。

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